iPhoneがPOS端末に? スマートフォン&モバイルEXPOの注目展示Japan IT Week 2011秋リポート(前編)

IT関連の総合展示会「Japan IT Week 2011秋」。本稿は、その1つである「スマートフォン&モバイルEXPO」の中から注目の展示をピックアップして紹介する。

2011年11月04日 09時00分 公開
[鳥越武史,TechTargetジャパン]

 2011年10月26日〜28日の3日間、東京ビッグサイトで開催された「スマートフォン&モバイルEXPO」。スマートフォンタブレット端末といったスマートデバイスの業務利用を本格検討する企業が増えつつある中、導入時のセキュリティ対策に加え、営業支援や勤怠管理といった業務の効率化を支援する製品やサービスに来場者の注目が集まった。

 本稿はスマートフォン&モバイルEXPOに展示されたスマートデバイス向け製品、サービスの中から、業務効率化を支援するものを中心に取り上げる。

スマートデバイスで即座に見積もり作成、即座に発注

 取引先との商談時に、スマートデバイスを電子カタログの表示用端末として利用するケースが増えつつある。ヤマトシステム開発の「モバイル営業支援サービス」はこうした利用方法から一歩進めて、電子カタログから商品の見積もりや発注を可能にしたのが特徴だ。

 スマートデバイスに表示した電子カタログにある商品名を利用者がタップすると、あらかじめ指定したフォーマットで見積書を自動作成する(写真1)。見積書は電子メールで商談相手や上長に送信できる。在庫管理や発注機能を備えており、スマートデバイスから在庫状況を確認したり、その場で商品を発注することも可能である。

写真 写真1:モバイル営業支援サービスの見積書作成画面。電子カタログの商品名をクリックすると、注文数量の入力画面を表示する《クリックで拡大》

 ユーザー企業の社内に電子カタログを管理する専用サーバを設置する。従業員がスマートデバイスから専用サーバにアクセスし、サーバに事前登録した電子カタログをダウンロードして利用する仕組みだ。対応端末は標準でAndroid搭載端末のみで、iOS搭載端末は個別対応。システムはスマートデバイスだけでなくPCでも利用できる。

iPhoneが店頭POSに

 iPhoneをPOS(Point Of Sale)端末に変えるシステムが、クレジット決済機能搭載型POSシステムの「Salasee」だ。システム開発のアスタリスクとクレジット決済サービス業のゼウス、クレジットカード業のユーシーカードの3社が協同開発した。SaaS(Software as a Service)で提供するので、ユーザー企業は自社にサーバを設置する必要はない。

 iPhoneに「ScanJacket」と呼ぶクレジットカード読み取りスキャナを装着することで、iPhoneをPOS端末として利用できる(写真2)。店舗の販売員がScanJacketのカード読み取りスキャナで顧客のクレジットカードを読み込むと、ScanJacketはカード情報を暗号化してアスタリスクのデータセンターに送信する。端末内にはデータを残さない。

写真 写真2:ScanJacketを装着したiPhoneでクレジットカードを読み取る様子

 データセンターにはカード情報に加えて在庫情報や売り上げ情報を登録する。担当者はWebブラウザでデータセンターにアクセスすることで、システムを利用する複数店舗の在庫情報や売り上げ情報を一目で把握できる。

 会場に展示はなかったが、フライトシステムコンサルティングの「POSマイスター」もiPhoneをPOS端末化する製品の1つだ。

画面同期でペーパーレス会議をスムーズに

 スマートデバイスを会議のペーパーレス化に活用したいという企業の声の高まりに応え、スマートデバイス対応のペーパーレス会議システムが登場している。そうした製品の1つが、日本インフォメーションの電子ドキュメントシステム「スマートセッション」だ。複数端末の画面同期機能を備えており、講演者が資料のページをめくると、それに応じて聴講者の端末画面を一斉に切り替えられるのが特徴である(写真3)。

写真 写真3:スマートセッションの画面同期機能の例。写真右下の端末の画面を切り替えると、それに合わせて他の3つの端末の画面が自動で切り替わる

 会議中、手元の資料にメモを取りたいと思う人は少なくないだろう。このシステムは、タッチによる手書きやキーボード入力によるメモを聴講者が画面上に保存する機能を搭載した。メモはシステムに保存することで会議後に確認できる。スマートデバイスへの資料の保存を禁止することも可能だ。

 なお、システムの利用には、文書登録用サーバの構築が必要となる。

勤怠管理や名刺管理などの製品が充実

 上記以外にも、スマートデバイスの業務利用を支援する製品が幾つか紹介されていた。例えばDonutsの「JOBCAN」は、スマートデバイスのICカード読み取り機能を使った勤怠管理システムだ。非接触型ICの通信規格である「NFC(Near Field Communication)」に準拠したチップを搭載するスマートデバイスに、FeliCaなどのICカードをタッチすることで打刻する仕組みだ(写真4)。NFC搭載のスマートデバイスは国内では市販されていないため、同社が調達したスマートデバイスを利用する。

写真 写真4:JOBCANを利用した勤怠管理の様子。従業員は、NFCに準拠したチップを搭載するスマートフォンにICカードをタッチして打刻する

 オムロンソフトウェアは、従業員の生産性向上のためのツールとして、Android向け名刺管理サービスの「Bizcaroid」やスマートフォンで社内のネットワークプリンタを利用可能にするサービス「Cortado」などを展示。メディアマートのブースでは、AndroidやiOS搭載端末を社内の内線電話として利用可能にするサービス「クラウドPBXサービス」を紹介し、来場者の足を止めていた。

 本稿で紹介しなかったモバイルデバイス管理(MDM)の製品やサービスを含め、セキュリティ関連の展示の様子は後編で紹介する予定だ。

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