タレントマネジメント製品紹介【第6回】
「玉突き人事」から「社内SNS」まで、オラクルの人材管理製品は全方位で攻める
複数の人材管理システムを持つオラクル。それぞれがタレントマネジメントソリューションを展開している。日本企業の人材管理プロセスに合致、SaaSでの提供など各製品の特徴を説明する。
複数のタレントマネジメントソリューションを展開
総合ベンダーとして、多様な業務アプリケーションをそのポートフォリオの中にそろえる日本オラクル。タレントマネジメントのソリューションについても複数の選択肢をユーザーに提供している。その中でも比較的歴史が古く、既に世界中で多くのユーザーを獲得しているのが「Oracle PeopleSoft Enterprise」(以下、PeopleSoft)と「Oracle E-Business Suite」(以下、EBS)だ。
PeopleSoftは、もともとは米PeopleSoftが開発・提供していたERP製品だったが、2005年にオラクルがPeopleSoftを買収。現在はオラクル製品の1つとして提供している。ERPパッケージ製品として財務、製造管理、CRMなど多様な機能モジュールをそろえるが、中でも特に人材管理の機能に優れる製品として知られてきた。現在でもこの機能は、「PeopleSoft HCM(Human Capital Management)」として、大手企業を中心に多くの企業が利用している。
一方のEBSは、オラクルが独自開発したERPパッケージ製品。大手企業向けのグローバルERP製品としては「SAP ERP」と並び称されることも多い。統合ERP製品として非常に多くの機能を持ち、人事関連の機能は「E-Business Suite HCM」モジュールで提供されている。
オラクルではこれら2つに加え、2011年10月に発表した「Oracle Fusion Applications」(Fusion Applications)でも、タレントマネジメント機能にかなり力を入れている(参考記事:“作らないERP”を目指す「Oracle Fusion Apps」、その提供モデルは?)。実際、日本国内におけるFusion Applicationsの提供は2012年3月に開始されたが、当初はSaaSによる人材管理・タレントマネジメント機能とCRM機能を販売していくという。これは、日本市場において今後、タレントマネジメント製品の需要が大きく伸びることを見越しての販売戦略だと考えられる。
人事管理を総合的にカバーするPeopleSoftとEBS
このように複数の製品ラインで人材管理ソリューションを持つオラクルだが、各製品でどのような違いがあるのだろうか。日本オラクル アプリケーション事業統括本部 CRM/HCM事業本部 ソリューション部 担当ディレクター 浅井三雄氏は、次のように説明する。
「これら3つの製品は、それぞれ明確に異なる特徴を持っている。PeopleSoftには、人事の総合ソリューションとしての強みと実績があり、EBSは統合ERPとしての高い価値を提供できる。一方Fusion Applicationsは、人事ソリューションの中でも特にタレントマネジメント領域に特化しており、またSaaS形式で提供するのも特徴だ。顧客はこれら3製品から、最もニーズに適したものを自由に選ぶことができる」
3製品とも、人材に関する情報を広く収集して人材データベースに集約し、それらを可視化してさまざまな角度から分析するという、タレントマネジメントの基本機能を備える。しかし、プラスαの部分の機能や使い勝手は、かなり異なる。
まずPeopleSoftは、日本の商習慣を前提とした、いわゆる「かゆい所に手が届く」きめ細かい人材管理ソリューションが大きな特徴だ。例えば、日本企業に特有の「玉突き人事」をサポートするための機能や、人事異動のシミュレーション機能などがまさにそれだ。また、従業員の過去の異動歴を基に、人事異動でかつての上司と部下の立場が逆転しないよう配慮するといった、日本企業独特の文化に配慮した機能も備える。
こうした、日本型組織の人事モデルに合わせた数々の機能について、日本オラクル アプリケーション事業統括本部 CRM/HCM事業本部 HCM営業部 担当ディレクター 新井哲也氏はこう述べる。
「PeopleSoftのこれらの機能は、日本のユーザーの要望に応じて実装されたもの。日本企業の人事は、海外企業のそれと比べ従業員に対する気遣いを重視するため、こうした機能は利用価値が大きい。そのため、タレントマネジメントという言葉が一般化する前から、PeopleSoftの機能に高い関心を示す日本企業が多かった」
一方のEBSは、「統合ERPパッケージの中の1機能」としてタレントマネジメントを利用したいというニーズに合致する。統合データベースの中に、人材情報はもちろんのこと、財務データやサプライチェーンの情報も含めた、経営に関する全ての情報を集め、それらを一環した経営指標の体系に沿って管理・可視化できる。また、BI(ビジネスインテリジェンス)機能もあらかじめ備わっているため、人材情報を財務データと組み合わせながらさまざまな切り口から統計・分析するようなことも容易だ。
またその導入形態も、タレントマネジメントのための単体ソリューションというよりは、統合ERPとして他モジュールと合わせて一括導入されるケースが多いという。
「ERPとして一括導入し、自社業務をある程度パッケージの仕様に合わせてもいいという企業や、まずは経営指標のレベルでタレントマネジメントをやりたいというユーザーは、EBSを選ぶ傾向がある。一方、自社の人事業務プロセスに合わせて、よりきめ細かいタレントマネジメントを行いたいという企業は、PeopleSoftを選択する傾向が強い。ただどちらの製品も、基本的な労務管理とタレントマネジメントの機能を併せ持っており、人事に関する全業務プロセスを一通り網羅している点は同じだ」(新井氏)
組織・チームの管理に強みを持つFusion Applications
前記2つのパッケージ製品と比較すると、最近登場したばかりのFusion Applicationsに搭載されたタレントマネジメント機能は、若干毛色が異なる。PeopleSoftとEBSに実装されたタレントマネジメント機能は、従業員個人を軸とした人材の採用・育成・配置・処遇のモニタリングに主眼を置いている。もちろん、これらはオーソドックスなタレントマネジメントのソリューションであり、Fusion Applicationsも同様の機能を持つ。しかし同製品では、さらに「組織やチームの軸」が加わっているのが大きな特徴だ。
「個人だけでなく、個人をチームに編成したときの総合力がビジネスにどう寄与できるか。Fusion Applicationsは、この点を可視化するソリューションに優れている」(新井氏)
一例を挙げれば、Fusion Applicationsは社内SNS機能を備えている。通常、SNSというと、従業員が個人レベルで活用することを前提にしたものが多い。しかし、Fusion Applicationsに備わっているSNS機能は、チームやプロジェクト単位での活動を可視化することを主な目的にしている。社内にどのようなチームがあり、その中で活動している各従業員がどのようなミッションの下、どのような活動を行い、周囲からどのような評価やフィードバックを得ているのか。そういったことが部門やプロジェクトの単位で可視化されるため、従業員個人だけでなく、チーム力全体の評価をより的確に行うことができる。
また、多くのタレントマネジメント製品に実装されている社員評定の考え方「9ブロックス」の機能に関しても、組織やチームの観点が取り入れられている。単に人材を9つのマス目上に静的にマッピングするだけでなく、その人材がどのような組織やチームに属しており、またこれまでどういった異動や評価の変遷をたどって9ブロックス上の位置付けが変わってきたのか。こういった点を時系列に沿って簡単に追えるようになっている。
「チーム戦力としての従業員1人1人のパフォーマンスをいかに上げて、事業の成果に結び付けていくか。Fusion Applicationsはこの点にフォーカスしながら、企業にとってより実践的なタレントマネジメントソリューションを実現している」(浅井氏)
新タレントマネジメント製品を提供へ
オラクルでは現在、以上で紹介した3種類のタレントマネジメントソリューションを並行して提供している。そして、この3製品それぞれの機能強化とサポートは、今後も継続して行っていくという。この事業方針について、浅井氏は次のように説明する。
「どれか1つの製品に他の製品がマージされることはない。今後も、この3製品それぞれの開発とサポートを並行して続けていく。われわれはこのサポート方針を『Applications Unlimited』と呼んでいるが、これによって顧客はどの製品を選んでも投資を無駄にすることなく、安心して継続利用できる」
また最近、これら3製品に新たなタレントマネジメントソリューションが加わった。それが、2012年2月に同社が買収した米Taleoのソリューションだ。TaleoはSaaS型のタレントマネジメントソリューションを提供してきたベンダーで、特に採用管理ソリューションに強みを持つ。2011年12月に米SAPが買収した米SuccessFactorsの競合企業としても知られ、オラクルによるTaleo買収はこれに対抗する動きと見る向きもある(参考記事:「SuccessFactors」が実現する日本企業に最適なタレントマネジメント)。
日本国内でもこれまで外資系企業の日本法人においてTaleoが利用される例はあったが、オラクルでは今後、日本市場におけるTaleoの本格的な販売活動に力を入れていく予定だという。
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