5秒間隔のデータ階層化で運用負荷を削減するミッドレンジストレージ「Pro 5000」SMB向けストレージ製品紹介:ドットヒルシステムズ

ドットヒルシステムズのPro 5000は、独自の特許技術によってデータの自動再配置やI/Oの高速化、ストレージプールの効率化などを実現する。

2013年08月08日 08時00分 公開
[富永康信,ロビンソン]

 米コロラド州ロングモントに本社を置くDot Hill Systemsは、1984年創業のストレージ専門企業だ。今回取り上げる「Pro 5000」シリーズ(以下、Pro 5000)は、同社が2012年11月に発表したミッドレンジSAN(Storage Area Network)市場向けのフラッグシップモデル。データアクセスの頻度によって自動的にデータ再配置を行い、なるべく人の手を介さない運用を実現する。データ再配置のポリシー設定なども不要だ。

photo ドットヒルシステムズのミッドレンジSANストレージ「Pro 5000」シリーズ

学習しながら性能向上を図るアルゴリズムで階層化を実現

photo 「運用負荷を極限まで削減するストレージを開発することが当社の一貫した方針」と話す青木氏

 Pro 5000の特徴は、自律的階層化/仮想化ソフトウェア製品群「RealStor」を搭載していること。RealStorによって、データのアクセス頻度を常にモニタリングし、高速デバイス階層(SSD)や高速HDD階層(SAS)、大容量デバイス階層(ニアラインSAS)の3階層の中で最も適した場所に再配置する。I/Oの高速化とストレージプールの効率化を実現する。

 ドットヒルシステムズ カントリーマネージャー 青木 登氏は「Pro 5000は、入力データをSASドライブに格納し、5秒ごとにページへのアクセス頻度を見ながらSSDやニアラインSASに再配置する。ページアクセスの本質を見極めながら学習し、じわじわと性能を向上させる独自のアルゴリズムによって階層化するのが特徴」と説明する。

photo 自律的階層化ソフトウェア「RealStor」による基本動作の例

 また「ストレージ管理者はプロビジョニングやマッピングを手探りで行う必要がなく、日々の運用や拡張が容易に行えるようになる」とRealStorのメリットを語る。ここからは、RealStorの主な機能と概要を説明する。

ストレージ階層化機能「RealTier」

 特許申請中の独自アルゴリズムを活用し、複雑なポリシーの設定なしに発見的アプローチによる階層化を5秒ごとに実施する。アクセスパターンに適した高速なI/Oを実現するとともに、急激な階層化を回避してI/Oへの影響を最小限に維持。階層化の状態を直観的に可視化するためのGUIによる性能モニタリングが可能。

シンプロビジョニング機能「RealThin」

 ストレージの物理容量を問わずボリュームを再配置する。実装されているディスク容量を最大限に活用し、使用量によって2段階の警告を発するよう、しきい値を自由に設定できる。

仮想ストレージプール機能「RealPool」

 ストレージのセットアップを容易にする。データを4Mバイト単位に細かく分解(ページ化)し、作られたプールからRAIDレベルを意識させずに必要なサイズのボリュームを切り出して割り当てるので、ドライブの性能を引き出せるようになる。

高速リビルド手法「RealQuick」

 RAID全体ではなく、データが書かれているセクタのみを使って高速にリビルドする。一般的なリビルドと比較して、処理時間を最大5分の1まで短縮可能。壊れたドライブを交換するとホットスペアから自動的にリビルドバックできる。

シンプルな管理機能「RealSimple」

 専門的になりがちなRAIDレベルの管理、LUN(論理ユニット番号)の割り当てなどの作業手順を簡素化するユーザーインタフェース(UI)。

photo Pro 5000管理画面

 その他、自動階層化をあえて中止して特定のページやデータをSSDに明示的に固定する機能「RealSolid」を実装する予定だ。現在、RealStorの各機能はPro 5000のみに適用されているが、将来的には個々の機能を組み合わせて既存の下位モデルに搭載することも検討しているという。

 また、Pro 5000では「DMSパッケージ」を用意している。DMSパッケージは、AssuredSnap(スナップショット)、AssuredCopy(ボリュームコピー)、AssuredRemote(遠隔レプリケーション)、VSS(Volume Shadow Copy Service)、VDS(Virtual Disk Service)などのデータ保護機能を提供するオプション。VMware vSphereの「VMware vCenter Site Recovery Manager(SRM)」との連携により、仮想環境のサイトフェイルオーバーを実現できる。

過酷な環境でも動作する頑丈なハードウェア設計

 ドットヒルシステムズのストレージ製品は、第1世代の廉価版「Pro2000」シリーズから最新のPro5000まで共通の設計思想を貫いている。ローエンドモデルもミッドレンジモデルも全て2Uの筐体を用いた共通デザインを採用している。電源とコントローラーユニットが共用できる他、2.5インチと3.5インチのSAS/SATA、SSDの混在搭載が容易だ。加えて、管理CPUとRAID計算用CPUが独立して搭載され、RAID機能の可用性を高めている。

 また、過酷な環境でも動作し続ける頑丈な設計となっており、通信事業者向け機器の仕様規定「NEBS(Network Equipment Building Systems)」のレベル3(最高ランク)や、米国防省が規定する環境耐性規定「MIL-STD-801F/810G」に準拠。米国防省や通信事業者などでも採用されている。

VMwareのDeath Testをクリア

 仮想化ベンダー、VMwareもPro 5000のユーザーの1社だ。同社のグローバルサポートサービスオフィスではiSCSI版を採用している。1万8000〜5万 IOPSのワークロードでリアルタイム階層化機能を利用した文書管理を行っている。青木氏によると「VMwareでは、試験的に行った“過酷なテスト(Death Test)”をクリアし、より大規模なワークロードでも耐えられる」と評価しているという。

 日本国内でPro 5000のファーストユーザーとなった流通業の企業では、新サービスを次々と投入する中でMicrosoft SQL Server用のストレージの性能要件と管理の煩雑化が課題となっていた。しかしPro 5000のシンプロビジョニング、仮想ストレージプール機能などによってSSDを容易に追加できるようになり、ビジネスの変化にストレージ性能が追従できるようになったという。

FC/iSCSIハイブリッド版を投入予定

 Pro 5000の価格は、最小構成となる2階層/48ドライブモデルにオプションのDMS(データ保護機能)を加えて約1000万円から。全てのライセンス費用が含まれるので、ドライブを増加しても追加コストはかからない。

 ドットヒルシステムズでは、今後、日本からのレプリケーションへの要望に対応するために、ファイバーチャネル(FC)とiSCSIの両方のインタフェースを備えたハイブリッドバージョンをリリースする予定だという。

 また、データ保護機能の拡張も視野に入れている。「現在は、Pro 5000でもミッドレンジのエントリー向けだが、2014年にはより性能を高めたミッドレンジの中位クラスのモデルも投入していく」(青木氏)

Pro 5000 シリーズのモデル構成
モデル構成 モデルタイプ ドライブ構成 筺体タイプ
基本構成 2階層+リードキャッシュモデル 2×SSD、22×SAS、22×NL SAS 2U24×2
2階層パフォーマンスモデル 4×SSD、44×SAS 2U24×2
2階層キャパシティーモデル 4×SSD、44×NL SAS 2U24×2
3階層モデル 4×SSD、22×SAS、22×NL SAS 2U24×2
3階層キャパシティーモデル 4×SSD、22×SAS、22×3.5型 NL SAS 2U24×1 + 2U12×2
拡張構成 2階層パフォーマンスモデル 4×SSD、20×SAS 2U24×1
SAS パフォーマンスモデル 24×SAS 2U24×1
2.5型 NL SAS キャパシティーモデル 24×2.5型 NL SAS 2U24×1
3.5型 NL SAS キャパシティーモデル 24×3.5型 NL SAS 2U12×2

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