「Mac」「Chromebook」の猛追を受けるWindows
複雑なWindows 8ライセンスに込められたMicrosoftの狙いとは?
Windowsのライセンス管理は、基本的な用途であれば比較的シンプルだ。だが、ビジネスで利用する場合は事情が異なる。企業ユーザーとデスクトップ管理者の前には、オプション、制限など対処すべきことが山積している。
本稿では、「Windows 8」にも引き続き適用されるWindowsライセンスの基本的なルールを概説する(編注:以下の情報は米国の製品情報がベースです)。
フルライセンスの必要性
Microsoft製品の中では珍しいが、OEM版としてPCと一緒にWindowsを購入した場合、そのライセンスは最初にインストールされたデバイスでしか使用できない(この制限は例外的にドイツで無効になっている)。マザーボードを交換すると別のPCとして認識される。そのため、通常、マザーボードを交換した場合には新しいWindowsライセンスの購入が必要になることに注意が必要だ。HDDの交換やメモリ追加などが変更であれば、基本的に新しいライセンスの購入は不要だ。
米Microsoftは、どのボリュームライセンスプログラムでもフルバージョンのWindowsは販売していない。例えば、初期状態のPCをボリュームイメージで再イメージングすることはできない。ボリュームアップグレードライセンスを適用するには、販売店またはOEMから購入したフルライセンスのWindowsがPCにインストールされている必要がある。
販売店から購入したライセンスは以前のバージョンにダウングレードできない。だが、最近のOEM版ライセンスは、2つ前のバージョンにダウングレードすることが可能だ。「Windows 7」から「Windows XP」へ、「Windows 8」から「Windows Vista」へのダウングレードを行える。また、ボリュームアップグレードライセンスは、Windows 98までさかのぼってダウングレードできる。
インストール数
Microsoftは、通例として1台のPCにインストールできるWindowsの数を1つに制限してきた。だが、この方針はWindows 7で変更され、Windows 8では再度変更が加えられた。
「Windows 7 Professional」では「Windows XP Mode」の機能によってWindows XPの仮想マシンを無料で使用できる。だが、この機能はWindows 8には搭載されていない。
Windows 8では他のWindowsの無料インストールは提供されない。だが、2つ目のWindowsをインストールしようとした場合にインストールが拒否されることはなくなった。Windows 8では、1台以上の仮想マシンを使用するなどして複数のWindowsのコピーを同じ物理PCにインストールすることが可能だ。ただし、それぞれに有効なライセンスは必要になる。この変更によって、Windows 8の「クライアントHyper-V」の価値が高まる。この機能を使用すると、OSはPCのハードウェアではなく、仮想マシンの環境で実行される。
ソフトウェアアシュアランス
ソフトウェアアシュアランス(以下、SA)は、標準ライセンス向けにMicrosoftが提供しているアップグレードと特典のサービスである。そのため、Windowsライセンスの費用に追加でコストが掛かる。SAはエンタープライズアグリーメントで購入した全てのライセンスに自動的に追加される。購入後90日以内の新しいPCのWindowsライセンスに追加する場合は、他のプログラムでも購入可能だ。
Windowsに関連するSAの特典は特に複雑である。ほとんどの顧客はPCの新規購入時に最新バージョンのWindowsを入手する。そのため、最新版のWindowsへのアップグレードで小額の割引が適用されるというSAの主要特典にたいした価値はないだろう。顧客からSAの年間契約料を徴収するため、Microsoftはより需要の高いサービスをSAの特典として提供している。これは特に、仮想化とリモートアクセスのライセンスで顕著に見られる。
仮想化とリモートアクセス
Windows以外のデバイスがシェアを拡大する中、MicrosoftはWindowsの主役の座を守るべく奮闘している。SAを追加したWindowsライセンスが、PC以外のデバイスで多くの特典を利用するための要件となっているのも、そうした試みの1つと見ることができる。つまり、Windows以外のOSを実行しているデバイスを各種用途で使用する場合は、Windowsを実行しているデバイスだけでなくSAも必要になる。
SAを追加したWindows 8 PCのプライマリユーザーは、以下のことを行える。
- 「Windows To Go」を使用して、Windows 8をUSBフラッシュドライブにインストールし、互換性のあるデバイスで起動する
- Windows RTデバイスから仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)にアクセスする
- 個人所有/サードパーティー製の任意のデバイスを使って、社外から会社のVDIにアクセスできる(ローミング使用権)
- 「Companion Subscription License」(以下、CSL)を年額約60ドルで購入する(CSLを購入すると、PCのプライマリユーザーは最大4台の個人所有/会社所有のWindows以外のOSを実行しているデバイスからVDIにアクセスできる)
会社所有のWindowsデバイスはCSLでライセンスが付与される対象デバイスから除外されている。皮肉なことに、この除外により、企業がWindows PCではなく米Appleの「iPad」や米Googleの「Chromebook」を所有することが促進される結果となっている。
Microsoftの「Virtual Desktop Access」(以下、VDA)サブスクリプションは引き続き利用できる。CSLよりも高額で年額約100ドルのコストが掛かり、その利用は1台のデバイスに制限される。VDAは、経済的な理由でSAの追加を断念したデバイスに仮想化とリモートアクセスに関するSAの特典の大部分を提供している。
以前からある物理PC用の2種類のリモートアクセス権は、Windows 8でも継承されている。物理PCのプライマリユーザーは、そのPCに他の任意のデバイスからアクセスできる。この状況から、「GoToMyPC」「LogMeIn」「TeamViewer」などのPC間をつなぐソフトウェアが活用されることになるだろう。さらに、「Windows 8 Pro」のライセンスが付与されたデバイスは、Windows 8 Proライセンスが付与された他の物理デバイスにもアクセス可能だ。
Windows Enterprise
PC向けのWindows用にSAを購入しているボリュームライセンスユーザーは、Windows Enterpriseエディションも利用できる。このエディションには、「DirectAccess」「BranchCache」「サイドローディング」などの高度な機能が搭載されている。サイドローディングは、Windows 8向けのWindowsストアアプリをWindows Storeで公開することなくPCに直接インストールできる機能だ。
だが、「BitLocker」や「多言語ユーザーインタフェース」に代表される「Windows 7 Enterprise」に搭載されていた一部の高度な機能を使用するために、SAと「Windows 8 Enterprise」エディションを利用する必要ない。これらの機能はOEMや販売店から購入できるWindows 8 Proライセンスに組み込まれている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
実際に悪用される脆弱性は4%前後 優先的に対処すべき脆弱性を把握するには? -
事例
三菱ケミカルが脆弱性への迅速な対応フローを実現した方法とは? -
技術文書・技術解説
MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ -
事例
大阪市の未来を創る「行政DX」の本質と、その取り組みを支える統合基盤の実力 -
事例
【行政DX先進事例】横浜市が「市民に大切な時間を返す」を実現できた理由とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
【漫画付き】"RAG導入失敗3例"と処方箋 「入れても使われない」を終わらせる
-
3
管理職542人に聞いた AIやデジタル化でなくしたい主な事務作業第1位は?
-
4
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
5
「HDD終了」は本当か 巨大クラウド2社が下した大容量フラッシュへの決断
-
6
Claudeが耐量子暗号を攻略 迫られる暗号移行計画の見直し
-
7
「データ集約」はリスクだらけ? 分散型データセンターが“必然”になる理由
-
8
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
9
【マンガ付き】ひとり情シス支援の第一人者が教える”中堅中小企業こそRAGを使うべき理由”
-
10
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
2
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
3
属人化や仕様バグはなぜ起きる? AI時代に必須のドキュメント文化の作り方
-
4
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
5
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
6
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
7
中小企業必見、Microsoft 365でゼロトラストセキュリティを実現する方法
-
8
5分で分かる「AI駆動開発エージェント」 要件定義から設計・実装・テストまで
-
9
動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは
-
10
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー