データセンターで稼働するAndroidアプリを手元の端末で操作可能にする「仮想モバイルインフラ(VMI)」。モバイルアプリ管理の在り方を根本から変える可能性がある一方、課題も少なくない。
IT部門は、急増するモバイル端末向けのアプリケーションと、米Microsoftの「Windows」向けアプリの双方を求める従業員を敵対視する必要はない。「仮想モバイルインフラ」(VMI)が、その解決策になり得るからだ。
多くの点においてVMIの概念を実証しているのが「仮想デスクトップインフラ」(VDI)である。VDIは、端末に存在しないデスクトップ環境やアプリをエンドユーザーに提供するアプローチを確立した。一方、VMIは完全な仮想デスクトップを提供するものではなく、データセンターから従業員のモバイル端末に対して、モバイルOS環境とそのアプリを配信するものである。
VDIとVMIの概念は似ているが、この2つは全く同じではない。本稿では、VMIの仕組みと、その長所・短所について見ていこう。
VMIの中核要素は、データセンターのハイパーバイザーで実行されている米Googleの「Android」ベースの仮想マシン(VM)である。エンドユーザーが、データセンターにホストされているアプリ(以下、リモートアプリ)へアクセスするには、まずモバイル端末でVMIのクライアントアプリを選択する。すると、クライアントアプリとVMとを仲介する「コネクションブローカー」が画面転送プロトコルを使い、目的のアプリが実行されているVMへエンドユーザーの端末を接続する。実際に配信するのは画面のピクセルデータだけなので、米Appleの「iOS」を含む任意のモバイルOSからリモートアプリが利用できる。
Appleは、iOSを他社のハードウェアで動作させることを許可していない。そのため、VMIのバックエンドシステムの全要素には、Androidが稼働できることが求められる。IT部門は、ハイパーバイザーまたはLinuxの隔離空間である「Linuxコンテナ」に、Androidが稼働するVMをホストするといった対処が必要になる。
VMIを使用すると、アプリとデータをデータセンターで安全に保管できる。IT部門は、仮に従業員がスマートフォンを紛失しても、第三者が端末を拾ってLANやWANといった社内ネットワークへアクセスしてしまうことを心配する必要はない。また従業員が退職したときには、全てのリモートアプリへのアクセスをリモートで遮断できる。
こうしたセキュリティ層が組み込まれていることから、VMIはプライバシーが非常に重視される医療業界などにとって理想的である。端末ではなくVMにデータを格納するので、業務関連のアプリ全てをVMIのクライアントアプリ経由で実行するように制限を掛けることも可能だ。こうすれば、業務情報と個人情報を切り分けて管理することが容易になる。
セキュリティだけがVMIのメリットではない。VMIのクライアントアプリはどのモバイルOSでも動作するので、1つのバージョンのリモートアプリを開発すれば任意の端末で利用できる。そのため、開発者は同じアプリを何度も作成することに時間を費やす必要がない。従業員に対して、リモートアプリへのアクセスに利用するモバイル端末を制限することも不要だ。
VDIと比べて、モバイル端末での操作性への配慮が進んでいるのもVMIの利点だ。VMIのクライアントアプリは一般的に、タッチ操作を前提に設計されている。さらに、リモートアプリからローカル端末のGPS機能やカメラ機能などを使用できるようにしていることも多く、よりネイティブアプリに近い操作性が実現できる。
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