「ドローンを使った荷物配送」で理解する“フォグコンピューティング”の技術的特徴5つの課題を解決する

「フォグコンピューティング」はCisco Systemsが提唱した概念だ。いまひとつ理解が難しいこの新しい仕組みを、今注目のドローンビジネスから解説しよう。

2017年05月10日 08時00分 公開
[Lynne CanavanTechTarget]
フォグコンピューティングの普及を進めているOpenFog Consortiumが示したドローン配送システムにおけるフォグコンピューティングの構成

 IoT(モノのインターネット)や5G、AI(人工知能)といった新技術を業界が採用する中で、フォグコンピューティングも同様に、ギャップを埋める技術として人気が急上昇している。実際に、待ち時間の少ない安定した運用を実現でき、クラウドに常時接続する必要性もなくなることから、フォグはそうした新興アーキテクチャにとって不可欠な技術といえる。フォグはクラウドからモノへの失われたつながりを提供する。

 フォグの価値について解説するため、「ドローンを使った荷物配達」のネットワークロジスティックを例にとる。この実例が理想的なのは、わずか数年前までは未来のことのように思える新興分野だったものが、今ではフォグなどの技術のおかげで現実的になっただけでなく、実用化が目前に迫っているためだ。ドローンによる郵便物や商品配達のビジネスプランは世界の大手企業の役員会で論議されている。フォグのおかげでこの概念は安全かつ商業利益が見込める現実と化す。以下にその仕組みを解説する。

フォグについて知っておくべきこと

 フォグコンピューティングは演算能力、ストレージ、通信、コントロール、意思決定を、データが生成されるネットワークエッジへ選択的に近づける。これによって、ミッションクリティカルなデータ集中型の用例に対する現在のインフラの限界を解決する。

 フォグは従来型のクラウドベースコンピューティングモデルの拡張であり、アーキテクチャの実装をネットワークのトポロジーの複数の層に置くことができる。フォグへのそうした拡張では、クラウドコンピューティングのコンテナ化や仮想化、オーケストレーション、管理性、効率性といった利点は全て保たれる。この新モデルにおける演算処理、ネットワーキング、ストレージ、アクセラレーションの要素は、フォグノードと呼ばれる。これらは流動的な接続のシステムを構成し、物理エッジに完全には固定されない。

 では、ドローンを使った荷物配送の用例にフォグを重ねてみよう。

ドローン配送の5つの課題をフォグで解決

 ドローンには帯域幅とスケール、安全性、経費という明らかな問題がある。自動飛行と非目視飛行には、運用上の課題や複雑さも付きまとう。大規模なドローン配送を実現するためには、以下の5つの問題を解決しなければならない。

1.ドローンのハブ管理

 ドローン配送が普及すれば、全てのベンダーがそれぞれ他社から独立して個々にドローンの一団を運用するのは非現実的になる。ドローンの使用を拡大するためには、業界が空港のようなドローンハブを開発して、多数の企業のドローン運航を調整する必要が生じる。地上と上空でドローンの交通と運用を調整するためには、先端技術でそうしたハブを管理することが不可欠になる。

 地上のフォグコンピューティングコントローラーは、ドローンのフォグノードと通信して、瞬間的なタイミングで複雑な離着陸や積み込みと積み下ろし、メンテナンスの調整を行う。

2.衝突防止と安全

 高いスケールのドローン配送サービスを展開するためには、航空スペースを共有するしか方法はない。上空を飛行するドローンが数千機しかなければ、衝突についてそれほど心配する必要はないかもしれない。だがそれが数百万機になると、ドローン同士が(あるいは鳥、航空機、高い構造物に)衝突する真の危険が生じる。無人機には予期しない衝突を認識し、ミリ秒以下の速さでコースを変更する手段が求められる。

 全てのドローンは飛行計画を持つ必要がある。従ってフォグを使えば離着陸のスケジュールを組んで衝突を防止できる。加えてフォグ通信では、この規模のドローンの積み込みや離着陸、メンテナンスの調整に求められる数秒単位のタイミングが実現できる。地上のフォグコントローラーは、ドローンと「管制塔」との間の通信ループを短縮するための近接性を提供する。待ち時間は、次のアップデートが配信されるまで、ドローンを2インチしか動かさないレベルにまで短縮できる(同じ通信がクラウドを経由した場合、ドローンは12フィート動く)。

3.帯域幅のボトルネックと経費

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