NVMeで期待できるユースケースを探る 電力削減、DB高速化などSAS/SATAからの交代

企業のIT部門は今、従来のフラッシュストレージから、さらに高速のNVMeベースのテクノロジーに関心を寄せている。どのようなユースケースが考えられるかを探る。

2018年03月05日 05時00分 公開
[Carol SliwaTechTarget]

 ITプロフェッショナルにとっては、SAS/SATAベースのフラッシュストレージが発揮するパフォーマンスはもはや当たり前になっている。今待ち望まれているのは最新のNVMeテクノロジーだ。要求が厳しいアプリケーションにNVMeを既に使用している企業もある。一方、ベンダーのNVMeサポートの動向を見守っている企業もある。

 NVMeベースのSSDは、大半のIT部門が一般に使用する標準SAS/SATAベースのSSDと比べて待機時間が短く、パフォーマンスが高い。「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)はNVMeのメリットをネットワーク全体のアプリケーションサーバとストレージアレイ間に拡張する。

 NVMeの真価を判断するのは時期尚早だ。だが、I/O要件が特に厳しいアプリケーションのワークロードにNVMeを既に採用している企業もある。市場統計ではそうした企業は明らかに少数派だが、ストレージベンダーがサポートを強化し、NVMeベースの企業向けPCI Express SSDの価格が下がっていくにつれ、導入数は増えていくだろう。

データベースの応答時間を短縮するNVMe

 医療プロバイダーBaystate Healthは2017年、データベースの応答時間を短縮するため、思い切ってNVMeベースのSSDを採用した。同社は、半径約10マイル内にデータセンターを3カ所設置し、「Cisco Unified Computing System」で「VMware vSAN」を使用している。

 同社でITインフラとテクノロジー担当ディレクターを務めるラジ・スブラマニアン氏は次のように話している。「格好をつけたかったわけでも、思い付きでもない。応答時間を短縮するためにNVMeが必要になった」

 スブラマニアン氏によれば、同社が導入しているInterSystems「Cache」データベースは特に、破損やパフォーマンス低下を防ぐため、応答時間を短くする必要があるという。

 「NVMeはキャッシュのパフォーマンス全体を改善した。だが、CacheのIOPS(1秒間当たりのI/O処理数)要件を十分に満たしているかどうかはまだ判断できていない」(スブラマニアン氏)

 金融機関は、パフォーマンスを向上する新しいテクノロジーを先行して導入する傾向がある。ある金融サービス企業でインフラアーキテクチャを担当するテクニカルディレクターによると、同社は以前Fusion-ioのPCIベースのSSDを使用していたが、標準NVMeベースのPCIe SSDのリリース直後からこちらに乗り換えたという。

 「疑問の余地なく動作速度が上がった。また価格が下がったためNVMeドライブの競争力が高まり、特にSASフラッシュドライブと、かなり拮抗(きっこう)するようになった」(氏名も企業名も非公表のテクニカルディレクター)

 この金融サービス企業は、取引システムとインメモリデータベースに適したストレージクラスのメモリを検討していた。そのため、Dell製サーバで実行しているAerospikeのインメモリNoSQLデータベースに、Samsung ElectronicsのNVMeベースPCIe SSDを導入した。同社には、ディスクベースとフラッシュベースの従来型SANストレージを使用するデータベースもあり、仮想サーバはPure Storage製のオールフラッシュアレイとDell EMC「XtremIO」に接続する。

NVMeのメリットを期待するフラッシュユーザー

 従来型SAS/SATAベースのSSDに備え付けられるオールフラッシュアレイのパフォーマンスは、多くの企業ユーザーのアプリケーションニーズを十分満たしている。だが、一般に使われているフラッシュから得られるメリットをある程度理解できた今、NVMeベースのテクノロジーのユースケースを探り始める企業も出てきた。

 「NVMeを選択肢から除外しているわけではない」と話すのは、LabCorpのエンタープライズプラットフォームエンジニアリング担当IT戦略ディレクター、アルトン・レベック氏だ。「医療と科学のコミュニティーは常に何かしら興味深いことを探っている。今のところは(従来の)SSDで十分満足できるパフォーマンスを得られているが、NVMeには引き続き目を向けその動向に注目したい」

 歯科、獣医学関連機器の卸売企業Patterson Companiesでインフラアーキテクトを務めるチャド・ブラナン氏にも話を聞いた。同氏は今、電子商取引と顧客サービスデータベースを「あきれるくらいに高速の」NVMeテクノロジーに乗り換えると、どのようなメリットがあるかを見極めているところだという。

 「どのようなときでも、I/O待機時間を短縮できるとしたら、これまで以上に必要なものを素早く顧客に提供できるようになる。当社には、同じ製品系列を提供する巨大な競争相手が1社ある。売り上げを確保し、顧客満足度を維持する。それが当社のシンプルな希望だ」(ブラナン氏)

 ブラナン氏は、社内スタッフの電話サポート対応時間が短縮されることを期待する。「数秒が積み重なって次第に肥大化する。バックエンドのストレージが遅いと1日に1人のFTE(常勤労働者)が通常可能なことに対処できなくなり、やがてもう1人FTEを雇わなければならなくなる」

 Frost BankはPure Storageの大口顧客で、7台の「FlashArray」と3台の「FlashBlade」に従来型のSSDを備え付けている。IT運用担当シニアバイスプレジデントのダニエル・キング氏は、同行は2019年初頭までにはNVMeを導入すると予測する。Pure Storageは2018年、FlashArrayでNVMeベースのSSDへの無停止アップグレードを実行することを約束しているため、移行は難なく終わると思われる。

 「正直、Pure Storageの負荷対応力次第だ。当社は負荷約60~70%で運用している。負荷が高くなるにつれ、導入したPure Storageがその負荷にどれだけ対応できるかすぐに分かる」(キング氏)

 同氏は例として、約150TBのデータが保存されているFrost BankのVMwareサーバファームを挙げた。重複排除と圧縮を実行した後のデータは12TBまで減少し、3台のPure Storageアレイに負荷を均等に分散している。高速NVMeは、コントローラーの負荷分散にメリットを提供する可能性があると同氏は話す。

電力を削減するNVMe

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