うるさい隣人問題も解消?
「Google Compute Engine」のシングルテナントVMがもたらす3つのメリット
Googleが使いやすさを考慮したクラウドサービスの探求を続けている。その一環で追加したのが専用のハードウェアに直接アクセスする仮想マシン(VM)だ。レガシーシステム特有の要件が必要な企業にも役立つ可能性がある。
Googleが提供する最新の仮想マシン(VM)は、標準のパブリッククラウドのフレームワークに逆行するものだが、柔軟性が新たに加わったことで企業の要望を満たすことができる。
「Google Cloud Platform」(GCP)の顧客は、同社のIaaS「Google Compute Engine」でシングルテナントのノードにアクセスできるようになる。現在はβ版であるこのシングルテナントVMには3つのメリットがある。1つ目は、共有サーバで生じる「ノイジーネイバー(うるさい隣人)」の問題が減少する。2つ目は、とりわけデータの保存場所に懸念を抱くユーザーに対して新しいセキュリティ層を追加する。3つ目は、厳格なライセンスの制約があるような特定のオンプレミスのワークロード移行を容易にする。
パブリッククラウドモデルはマルチテナントの考え方を土台にし、プロバイダーが同一の物理ホストに複数のアカウントを収容することでスケールメリットを生かすものだ。この初期の顧客は、専用ハードウェアのメリットを手放す代わりに、インフラ管理の作業量削減と素早くスケールアウトできる能力を選択した。
魅力的なGoogle Cloud PlatformのシングルテナントVM
だが従来型の企業がパブリッククラウド導入数を増やしてきたことに合わせ、プロバイダーはプライベートネットワーク、仮想プライベートクラウド、ベアメタルサーバといった、企業のデータセンターに合ったものに近い機能を追加してきた。シングルテナントでは、仮想アーキテクチャを維持しながら、こうしたアプローチをハードウェアレベルまで落とし込む。「Amazon Web Services」(AWS)はシングルテナントとしては初めて、ハードウェア専有インスタンスがあるVMを提供した。
Googleが提供するシングルテナントのVMは、専用のサーバに配置されることを除けば、他のインスタンスと同じ方法でアクセスできる。ノードの場所は、配置用のアルゴリズムによって自動的に選択されるか、顧客が起動時に手動で選択する。これらのインスタンスのサイズはカスタマイズ可能で、仮想CPU(vCPU)とシステムメモリに対して1秒単位で課金される。シングルテナントには10%の割増料金が掛かる。
Googleはパブリッククラウド機能に関しては依然、AWSと「Microsoft Azure」の後塵(こうじん)を拝しているが、「エンジニアリング向けだけに価値があるクラウド」というイメージを払拭するため、最近はサービスやサポートを追加している。調査会社451 Researchでアナリストを務めるフェルナンド・モンテネグロ氏は次のように指摘している。「Googleは特に、クラウド利用時に複数のステークホルダーが承認しなければならないような大規模企業を取り込んで、顧客基盤を拡大する必要がある」
全ての企業が割増料金を払ってまでこの機能を利用するとは考えられないが、専用のハードウェアを特定の場所で使用していることを証明しなければならない企業など、コンプライアンスに心配がある企業にとっては極めて重要な機能だ。例えば、DevOpsチームが運用環境にリリースするCI(継続的インテグレーション)/CD(継続的デリバリー)パイプラインの構築を希望しても、リスクを嫌うセキュリティチームがそれに不安を感じるかもしれない。シングルテナントを使えば、DevOpsチームはスピンアップとスピンダウンの柔軟性を獲得でき、セキュリティチームは社内外の要件を満たせる環境ならばシングルテナントを承認できる。
「セキュリティチームがDevOpsに歩み寄り、DevOpsチームもセキュリティチームも双方要望を満たし、満足するだろう」(モンテネグロ氏)
あまり目立たない点だが、専用ハードウェアにはレガシーシステムをクラウドへリフト&シフトする際の利点もある。従来のERP契約では、ソケットやホストの固有のセットが必要になることがある。この場合、マルチテナントプラットフォームでは、ライセンス規約に従っているかどうかの確認は、要件がVMと結び付いていないため面倒な作業になる可能性がある。
調査会社IDCでアナリストを務めるディーパック・モーハン氏は、「ライセンス持ち込み(BYOL:Bring Your Own License)の状況では、こうした専用ホストによって顧客のライセンスコストを最適化し、パブリッククラウドでそのシステム運用コストを削減できる」と話す。
「企業アプリケーションのマイグレーションの観点では、クラウド移行においてはセキュリティとライセンスが最優先の検討事項となるため、これは確実に重要な機能になる」とモーハン氏は続ける。
同じサーバで他のVMによるCPUとI/Oの使用率が高い時、自社のアプリケーションのパフォーマンスに影響が出るのではないかとユーザーが懸念し、これがノイジーネイバー問題につながる、ともモーハン氏は指摘する。
「これまで耳にした顧客の事例で興味深かったものは、待ち時間感度に関する機能だ。なるべく短時間で処理して応答を返す機能を必要としていた。この顧客は、サーバのリソース使用率を制御できるAWSの専有ホストを使用することになった」(モーハン氏)
それでも、シングルテナントVMを多くのユーザーが大慌てで導入する種類の機能だと考えてはいけない。
IDCでアナリストを務めるアビ・デュガー氏は次のように話す。「シングルテナントVMが最も役に立つのは、厳格なコンプライアンスとガバナンスが求められていて、かつVMをパブリッククラウドで運用する必要があるケースだ。このような厳しい基準のもとで運用する場合、VMをオンプレミスに保持するほうが容易であるため、専用インスタンスをクラウドに設けるというのは比較的ニッチなケースだと思う」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
2
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
3
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
4
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
5
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
8
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
9
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
10
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
-
9
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
10
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー