VDI/DaaSでもGPUを多用したグラフィックスアプリケーションは利用可能だ。そうなるはずだ。Googleのゲームサービス「Stadia」が全てを変えてしまうかもしれない。
米アナハイムで開催されたNutanixのイベント「2019 .NEXT Conference」(2019年5月)で披露されたデモは、最新VDIの飛躍的な進化を印象付けるものだった。仮想デスクトップは、低負荷の処理しか必要としないユーザーだけのものという考えは変える必要がある。
Nutanixのニコラ・ボジノビッチ氏(バイスプレジデント兼統括マネジャー)が行ったデモは、WindowsをストリーミングするDaaS(Desktop as a Service)製品「Frame」を使って「Chrome」に4Kのビデオクリップを60fpsでストリーミング。それを「Adobe Premiere Pro」で編集するというものだ。同氏は、ドラマ『Game of Thrones』にStarbucksのカップが映り込んだ悪評高いシーン(訳注)をマスキングする方法を実演した。
訳注:Game of Thronesのシーズン8のエピソード4(2019年5月5日配信)に、Starbucksのカップが映り込み物議を醸した。問題のシーンは修正済みのため、現在配信されているものでは確認できない。
ボジノビッチ氏は、2019年はVDIが主流になる転換期になると考えている。
Citrix Systemsが仮想デスクトップの先駆けとなって以来、Windowsのユーザーインタフェースをシンクライアントにストリーミングできるようになった。企業のIT部門は、ユーザーのデスクトップ環境のマスターイメージを作成し、そのイメージへのセキュアなアクセスを提供できる。安定した堅牢(けんろう)なデスクトップイメージを確実にストリーミングできるようにはなったが、比較的シンプルなアプリケーション(「Excel」など)を提供するために展開することが多かった。
VDIはユーザーアクセスが少ない場面に利用される傾向があり、IT部門の多くは仮想デスクトップがデスクトップコンピューティングの主流になるとは考えていなかった。
それが今、変化している。
ボジノビッチ氏にとってのひらめきの瞬間は、2019年3月19日、Googleが4Kストリームゲームプラットフォーム「Stadia」を公開したときだった。同氏によると、StadiaはVDIがGPUアクセラレーションを利用可能にする方法を示しているという。
Stadiaは演算やグラフィックス機能を大量に使うゲームをWebブラウザに直接、またはYouTube経由でストリーミングする次世代VDIプラットフォームになることを目指している。AMDのグラフィックスチップで実行され、新世代ゲームをストリーミングするために「Vulkan」(訳注)を使用する。GoogleでStadia開発者プラットフォーム製品の責任者を務めるドブ・ツィムリング氏は次のように話している。「GoogleとAMDはVulkan、Vulkan GPUドライバ、オープンソースのグラフィックス最適化ツールの専門知識を共有している。ゲーム業界全体に存在するイノベーションやコラボレーションの精神を尊重し、ゲーム開発者と共同でオープンソースのグラフィックス技術の未来を切り開いていくことを楽しみにしている」
訳注:3Dグラフィックス用のオープンソースのローレベルAPI。
企業にとって、この発表は仮想デスクトップのコンシューマライゼーションを意味する。VDIはグラフィックスを多用しないアプリケーションにしか適さないという考えを改めることになる。自宅でハイパフォーマンスなゲームをストリーミングした人々は、職場でハイパフォーマンスなグラフィックスアプリケーションをストリーミングできないことに疑問を抱くようになるだろう。
GPUを使うCADや動画編集などのアプリケーションを実行するために、超高性能のエンジニアリングワークステーションを必要とすることはなくなるだろう。ただし、グラフィックスアプリケーションを快適に使用するには、超高精細で色精度に優れ、高速でちらつきの少ないリフレッシュレートを備えたディスプレイが必要だろう。それでも、処理能力はバックエンドに任せ、ユーザーインタフェースだけをストリーミングできる。
GPUを多用するPCゲームをストリーミングするという考え方をゲーム業界が支持すれば、一般消費者はハイエンドのゲーム機を必要としなくなる。高速なネット環境さえ備えれば、誰でもゲームストリームにアクセスできるだろう。ゲーマーのエクスペリエンスはディスプレイの画質、ネットワークレイテンシ、オーディオおよび入力機器が基準になる。
IT業界はPCをDaaS向けのシンクライアントに使うという考えに向かっているように見える。ハードウェアに必要なのは、Chromeのようなブラウザを適切に実行できることだけだ。リソースを大量に使うPCアプリケーションの実行に必要なCPU、GPU、メモリ、ストレージ、ネットワーク帯域などのリソースは、クラウドなら必要になったタイミングで、バックエンドVDIなら管理コンソール経由で、簡単に調整できる。アプリケーションは、物理的なPCハードウェアに制約されなくなる。
これには新しいことは何もない。シンクライアントは、コンピューティングの黎明(れいめい)期から存在する。DEC(訳注)の「VT100」端末はメインフレームアプリケーションにテキストベースのユーザーインタフェースをストリーミングする手段を提供していた。Windowsアプリケーション開発者がソフトウェアをVDIに最適化したら、デスクトップITはストリーミングサービスとして見直されることになるだろう。
訳注:Digital Equipment Corporation。かつて存在したコンピュータ企業。1998年にCompaq Computerに買収され、さらにCompaqが2002年にHPと合併したことから、旧DEC製品はHPに受け継がれている。
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