フードサプライチェーン管理のためにブロックチェーンを使用する事例が登場している。しかしデータ収集にまつわる幾つかの問題があり、実現は容易ではないと専門家は指摘する。
食品供給に対する信頼性は、消費者、食品小売業者、卸売業者、国を問わず、特に優先すべき要素だ。ただしフードサプライチェーン(生産者から消費者へと食品を届けるための一連の流れ)を農場から消費者まで追跡し管理することは、市場のグローバル化によってますます複雑化している。食品がたどる経路が複雑になるほど、契約や規制を順守したり、食品の鮮度や安全性を確保したりする上で、各段階における説明責任の義務が大きくなる。
フードサプライチェーンのトレーサビリティー実現にブロックチェーンを使用することが、食品データの信頼性に通じる最善の道だと声高に叫ばれている。ただしブロックチェーンの信頼性は、そのチェーンの中の最も信頼性が低い部分を上回ることはないという批判がある。そうした脆弱(ぜいじゃく)な部分を最も強くする方法の一つは、データを完全かつ正確なものにすることだ。
Cisco Systemsで企業戦略イノベーション部門の統括責任者を務めるマチェイ・クランツ氏は次のように述べる。「『クリーン』なデータがブロックチェーンに入力されていること、侵害された連携ポイントが存在しないことを確認しなければならない。さもなければ、ブロックチェーンエコシステム全体が侵害されかねない」
農業経営者にとっては、IoT(モノのインターネット)のセンサーや必要なシステム連携の仕組みが整備されていて、ブロックチェーンの一部を管理するだけだとしても、自身のスキルを超える技術を扱うことになる可能性がある。脆弱性を突いた攻撃を最も受けやすい立場にある従業員や農業経営者は特にそうだろう。これはフードサプライチェーンにブロックチェーンを使用する際に、解決や、少なくとも明らかにすることを目指すもう一つの問題になる。
ノースカロライナ大学グリーンズボロ校(UNCG)ブライアンスクールオブビジネスアンドエコノミクスの教授であるニール・キシェトリ氏によると、アフリカや中国といった発展途上国の食品のほとんどは、技術やインターネットを利用することが困難な、非常に小さな農場で生産されている。こうした環境では「ブロックチェーンのシステムはコストが高くなる可能性がある」とキシェトリ氏は指摘する。
JavaScript開発を専門とするGunner Technologyで最高技術責任者(CTO)を務めるダリー・マーケンス氏は、次のように疑問を呈する。「ブラジルの小さなコーヒー農場の経営者向けにIoTデバイスを整備したとしよう。その後、IoTデバイスが故障することは避けられない。だが、その際に農場経営者自らがトラブルシューティングをすると本当に思えるだろうか」
そうした課題があるにもかかわらず、ブロックチェーンへの関心は伸び続けている。その証拠も簡単に見つけられる。調査会社Gartnerによると、2017年1月以降「ブロックチェーン」という用語は同社のWebサイトで最も検索されているという。ブロックチェーンは既に主要食品業者のサプライチェーンに入り込んでいると同社は報告する。
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