3D XPoint、Z-NAND、TLC、QLC……ユースケースに最適なSSDとは各SSDの特徴を再整理

SSDには複数の種類があり、速度もコストも特徴も異なる。ユースケースに最適なSSDを選ぶには、各種SSDの仕様を理解しなければならない。場合によってはSSDによるストレージ階層化も検討すべきだろう。

2020年04月24日 08時00分 公開
[Stephen PritchardComputer Weekly]

 “SSD”といっても全てが同じではない。Intelの「Optane」、Micron Technologyの「QuantX」など、3D XPointを使用するハイエンド製品は書き込み速度が1秒当たり数GBで、パフォーマンスはDRAMに近い。だが非常に高価だ。ローエンドのSSDでもHDDよりははるかに高速だが、書き込み速度は良くても1秒当たり500MB程度だ。

 本稿では、各種フラッシュストレージのパフォーマンス、コスト、ユースケースの違いを紹介する。

パフォーマンス、容量、耐久性

 適切なSSDを選ぶ上で、パフォーマンスは大きな差別化要因だ。だが、容量と耐久性も問題になるため、その選択は難しい。Seagate Technologyは2016年に60TBのSSDを設計したと発表したものの、現時点の商用SSDの最大容量は16TBだ。

 SSDの価格は下がっているが、大容量SSDはまだ高価だ。Samsung Electronicsの15.3TBのTLCフラッシュドライブは約3000ポンド(約39万円)もする。一方、Seagate製の16TBのHDDは約400ポンド(約5万円)だ。

 さらに、耐久性の問題がある。安価なフラッシュストレージほど短期間に消耗しやすい。QLCフラッシュは特にそうで、ストレージ全体を200回も書き換えないうちに寿命を迎える。QLCフラッシュが役立つのは、読み取り時間が短く消費電力が少ないことは求められても、書き込み頻度が少ないWebアプリケーションやアーカイブなどに限られる。ただし、こうした問題は高度な管理ソフトウェアと適切なエンジニアリングによって対処されている。

 IDCでアナリストを務めるアンドリュー・バス氏は次のように述べる。「パフォーマンスが高いHDDでも、満足のいく密度、容量、速度を得るのは難しい。フラッシュであればコストパフォーマンス比が良く、能力も申し分ない」

 NVMeはフラッシュメディア向けに設計されたインタフェースだ。接続規格にPCIeを使用し、SATAよりも高いI/Oパフォーマンスを発揮する。SATAは、最近までSSDの接続によく使われていたHDD時代のプロトコルだ。

 NVMeはストレージアレイ製品のオプションの主流になりつつあり、サーバのアドインとして一般的になっている。NVMeはメディアとしてOptaneなどの3D XPointに加え、任意のNANDフラッシュを使うことができる。

Optane(3D XPoint)、Z-NAND

IOPS:書き込み50万、読み取り55万

帯域幅:読み取り6.6GB/s、書き込み2.3GB/s

容量:小

耐久性:優

コスト:高

 IntelとMicronが開発した3D XPointは幾つかバージョンがあり、パフォーマンスは揮発性メモリに近い。OptaneはIntelのブランド名だ。

 最もパフォーマンスが高いのは、Optane DIMMのバイトアドレス指定可能モードだ。これは速度とレイテンシの点でDRAMに近いが、容量はDRAMより多い。だが、IDCのバス氏によると最高のパフォーマンスを引き出すにはOSとアプリケーションのサポートが必要だという。

 Optane DIMMのブロックアドレス指定可能モードは、アプリケーションを変更しなくてもストレージのアドレス指定ができる。だがパフォーマンスに悪影響があり、コストもバイトアドレス指定可能モードと同じく高い。ブロックアドレス指定可能モードはファイルベースの用途に適しているが、バイトアドレス指定可能モードほどのパフォーマンスは出ない。

 Optane SSDは、一貫して高いパフォーマンスを発揮するフラッシュストレージの代替製品だ。だが高額なため、高パフォーマンスのストレージ階層などの用途への使用が適している。

 Micronは、この製品ラインを「ストレージクラスメモリ」と呼んでいる。同社によると、「QuantX X100」ラインの製品速度は競合するSSDより3倍速いという。

 Samsungが開発した「Z-NAND」はOptaneと競合する。この技術は、一定のパフォーマンスメトリックでパリティーをアーカイブする。パフォーマンスが高い理由は、SLCフラッシュにある。こちらも、非常に価格が高い。

TLCフラッシュ

IOPS:ランダム読み取り最大約8万5000

帯域幅:読み取り最大2.6GB/s、書き込み890MB/s(東芝「XD5」M.2)

容量:大

耐久性:劣

コスト:低(ただし、QLCフラッシュよりは高い)

 NVMeインタフェースとSATAインタフェースのどちらでも使用可能なTLCフラッシュは、読み取りと書き込みの両方を行うワークロードに適している。451 Researchのティム・スタマーズ氏によると、今やデータセンターのストレージの大半がTLCフラッシュだという。TLCフラッシュは1つのセルに3bitの情報を格納するため、以前からあるMLCフラッシュよりも50%コスト効率が高い。そのため、SLC(1つのセルに1bit)やMLC(1つのセルに2bit)フラッシュに広く取って代わっている。

 とはいえ、SLCやMLCフラッシュもパフォーマンスが高いため、そちらが好まれるケースもある。TLCフラッシュは耐久性ではなく容量を重視する技術なので、読み取り速度は十分だが書き込み速度は遅い。TLCフラッシュについて、Micronのストレージビジネス部門のジェイソン・エコールズ氏は、一般的な用途に適した技術だと評価する。特に、後述するQLCフラッシュよりも耐久性が高いためだ。

QLCフラッシュ

IOPS:ランダム読み取り最大約7万、ランダム書き込み1万3000(Micron「5210」)

帯域幅:読み取り540MB/s

容量:大

耐久性:劣

コスト:TLCフラッシュより低

 QLCは最新のフラッシュ技術で、1つのセルに4bitの情報を格納する。容量は大きいが耐久性と速度は犠牲になる。IOPSについては、読み取りパフォーマンスは高いが、書き込みパフォーマンスは非常に低い。そのため、QLCフラッシュが適しているのはアーカイブなど、書き込みサイクルがほとんどない用途だ。

ストレージの階層化

 実際問題として、データセンターのあらゆる要件を一つで満たせるフラッシュストレージは存在しない。そのため、ほとんどのITチームがストレージの階層化を行っている。ワークロードに応じてストレージをマッチングすることで、耐久性、容量、パフォーマンス、コストのバランスが最適化される。

 だが階層化するとHDDやテープなど、SSD以外のストレージメディアが組み込まれる可能性がある。それは、大半の企業がまだ完全なSSD環境には移行していないためだ。

 451 Researchのスタマーズ氏は次のように述べる。「HDDを全く使っていないデータセンターはほとんど存在しない。HDDなしを実現しているのは、政府の治安当局などのパフォーマンスニーズが非常に高く資金潤沢な組織か、ストレージの容量要件が少なくて運用の単純化の代償として出費を正当化できるIT組織くらいだ」

 「従って、階層化が非常に重要となる。HDDとフラッシュを組み合わせた多数のハイブリッドストレージが現在進行形で運用されており、今後何年もその状況は続くだろう。また、最高層のOptaneに加えてフラッシュ内に保持されたデータを組み合わせ、全てをSSDのハイブリッドシステムにしたとしても、階層化は重要だ」

スペックの出典:IDCおよびメーカーのデータ。本稿のためにストレージ技術の分類を支援してくれたIDCのアンドリュー・バス氏に感謝する。

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