MicrosoftとAlibaba Cloudが立ち上げた「Open Application Model」とはアプリとインフラを分離

MicrosoftとAlibaba Cloudが提携し、「Open Application Model」(OAM)を立ち上げた。OAMとは何か。OAMによって何が実現するのか。

2020年08月06日 08時00分 公開
[Adrian BridgwaterComputer Weekly]

 2019年10月、MicrosoftとAlibaba Cloudが提携して「Open Application Model」(OAM)を立ち上げた。

 Microsoftでプリンシパルプログラムマネジャーを務めるバーツラフ・トゥレチェク氏は本誌のインタビューに答え、OAMは現在v1Alpha2に到達していると話した。

 OAM仕様が目指すのは、特定のプラットフォームに一切依存しないアプリケーションを宣言によってモデル化する標準方法の提供と、OAM仕様を実装する各プラットフォームが独自の特性や機能を発揮できるようにすることだ。

 MicrosoftとAlibaba Cloudは、OAM仕様を実装するためにUpboundが運営する「Crossplane」プロジェクトにも参加する。

会員登録(無料)が必要です

 Crossplaneは、Kubernetes APIを使ってクラウドインフラ、サービス、アプリケーションのプロビジョニングと管理を可能にするオープンソースプロジェクトだ。Crossplaneのガバナンス委員会は、このプロジェクトの成長を促し続けるためにこのプロジェクトをCNCF(Cloud Native Computing Foundation)に寄贈するプロセスを開始している。

 トゥレチェク氏によると、OAMの根本を成すのは拡張可能なモデルを提供することだという。このモデルにより、機能を最小公倍数のセットに縮小することなくどのプラットフォームでも一貫してアプリケーションをモデル化できるようになる。

OAMの核となる3つの要素

 OAMアプリケーションは、「コンポーネント」「特性」「スコープ」という3つの基本要素で構成される。

  • コンポーネント:開発者が運用を目指すワークロード
  • 特性:各コンポーネントの運用上の動作
  • スコープ:運用上の共通動作を軸にコンポーネントをグループ化する方法。つまりアプリケーションをビルドする方法

 この3つの要素をシンプルな構成ファイルにまとめ、アプリケーション全体またはアプリケーションのパーツを定義する。

 「OAMの設計の鍵となるのは、OAMを実装する全てのプラットフォームがサポートするコンポーネント、特性、スコープの種類を選択できることだ。ただし、そのプラットフォームはOAMで記述されたモデル全体を実装する必要がある。これにより、全てのプラットフォームは一貫したアプリケーションモデルを利用しながらも、プラットフォーム独自の特性や機能を発揮することが可能になる。OAMのv1Alpha2ドラフトでは、プラットフォームがOAMを実装する方法に大きな影響を及ぼす細部の変更が導入されている」とトゥレチェク氏は「Open Source Blog」に記載している。

 開発者は、アプリケーションの導入について考える前にアプリケーションを運用するインフラを理解する必要がある。その理解の過程では通常アプリケーションとインフラをどの程度結び付ける必要があるかを考える。だが、アプリケーションとインフラを切り離す方向に進めるのがOAMのテーマだとも同氏はブログに記載している。

切り離すメリット

 OAMはアプリケーションとインフラを切り離せるように、アプリケーションの開発者、アプリケーションの運用担当者、インフラの運用担当者それぞれの役割を個別に定義している。

 OAMはアプリケーションモデルなので、最初の2つの役割に重点が置かれる。

 「Crossplaneでも3つの役割を同じように定義する。重視するのはインフラ運用担当者の役割だ。そのためOAMとCrossplaneが相互に補完し合うのは自然の流れだ。OAMがアプリケーションを定義し、Crossplaneがそのアプリケーションを運用するインフラを定義する」(トゥレチェク氏)

懸案事項の分離

 OAMは、アプリケーションとインフラを分離する。だが、こうした懸案事項の状態、役割、機能、動作を管理する能力はITスタックのあらゆるレベルで依然維持する必要がある。OAMの取り組みは、その目標を正確に実現できるように設計されている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

製品資料 発注ナビ株式会社

商談につながるリードをなぜ獲得できない? 調査で知るSaaSマーケの課題と対策

SaaSサービスが普及する一方、製品の多様化に伴い、さまざまな課題が発生している。特にベンダー側では、「商談につながるリードを獲得できない」という悩みを抱える企業が多いようだ。調査結果を基に、その実態と解決策を探る。

製品資料 株式会社ハイレゾ

GPUのスペック不足を解消、生成AIやLLMの開発を加速する注目の選択肢とは?

生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。