米国の医療機関Symphony Care Networkは、AutoML(自動機械学習)ツール「DataRobot」をさまざまな用途に生かしている。DataRobotの何が魅力であり、何が課題なのか。
前編「“AutoML懐疑派”だった医療機関がAutoMLのヘビーユーザーになるまで」で説明した通り、急性期の治療やリハビリテーションを主軸とする医療機関Symphony Care Networkは、再入院率や転倒リスクの予測といった用途で、DataRobotの同名「AutoML」(自動機械学習)ツールを利用している。Symphony Care Networkのスタッフが、患者の転倒率と再入院率を引き下げながら、より適切に患者にケアを提供できるようにする上で、DataRobotが効果を発揮している。
「重要なのは予測そのものではなく、予測によって結果がどう変わるかだ」と、Symphony Care Networkの最高情報責任者(CIO)を務めるネイサン・テイラー氏は話す。同社はさまざまな用途にDataRobotを活用している。
Symphony Care Networkは機械学習モデルを作成して、人工股関節置換術や人工膝関節置換術の需要を予測したり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者に対する治療法ごとの影響を予測したりしている。同機関が運営する介護施設の中にはCOVID-19による大きな影響を受けた所もあり、150人以上の死亡者と、200人以上の回復者が報告されている。
DataRobotでは複雑な作業をしなくても複数の機械学習モデルを試すことができるため、テイラー氏のチームは迅速に機械学習モデルを構築して臨床に導入できるようになった。DataRobotにより機械学習モデルを最新の状態に維持しやすくなることで、時間の経過によって機械学習モデルの精度が低下する「ドリフト」という現象に対処しやすくなった。
テイラー氏自身はDataRobotに不満がないものの、一部の開発者から「DataRobotは細かいアルゴリズムの構成を変更できない」という声が寄せられているという。「全てのパラメーターを調整したいという開発者もいるが、DataRobotではそれがかなわない」と同氏は認める。だが同氏にとって、そのことは問題にならない。「DataRobotを使用している理由はプロセスの高速化だ。細かいことは気にしない。とにかく機械学習モデルを構築できるようにしたい」(テイラー氏)
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