既存インフラを無駄にしない、NVMe-oF移行方法NVMe over Fabric再入門【後編】

既に構築されているストレージ環境を再利用すればNVMe-oFへの移行コストを抑えることができる。

2020年12月28日 08時00分 公開
[Stephen PritchardComputer Weekly]

 前編「『NVMeの制約』を解決する『NVMe-oF』」では、NVMe-oFの概要とパフォーマンスについて解説した。後編では、NVMe-oFのプロトコル、既存インフラを生かしたNVMe-oF移行の方法、NVMe over Fibre ChannelやNVMe over TCPなどを解説する。

プロトコル

 NVMe-oFは柔軟性の高い規格だ。NVMe-oFはさまざまなネットワークアーキテクチャをサポートするため、SANの既存の資産を直接利用するか、アップグレードして再利用できる可能性が高い。広範な業界がNVMe-oFをサポートするため、既存のサプライヤーもNVMe-oFへのパスを用意する可能性が高い。

 RDMAを使用するシステムには、RoCEとイーサネットまたはInfiniBandで動作するiWARPの2つのバージョンがある。RDMAを実装する場合、パフォーマンスを確保するためにネットワークを新たにビルドする。第6世代ファイバーチャネル(Gen6 FC)は、NVMe over Fibre Channelとソフトウェア定義ストレージをサポートする。

 最新オプションのNVMe over TCPは、十分高速な任意のイーサネットが使える可能性をもたらす。iSCSI SANを使っている企業にとっては論理的なアップグレード先になる。

 Gartnerのパルマー氏によると、NVMe over TCPはNVMe-oF導入の障壁を取り除くという。だが、NVMe over TCPにはまだ広範なサポートがないことに注意が必要だ。

既存のインフラの利用

 RDMAベースのNVMe-oFの大半は「新規ビルド」になるだろう。だが、NVMeの柔軟性は他のオプションも生み出す。

 NVMeストレージをサポートするようにファイバーチャネルをアップグレードするのがシンプルなパスになる可能性がある。ホストバスアダプターが最低でも16Gbps(できれば32Gbps)でNVMe-oFをサポートしていれば、Gen6 FCとNVMe-oFは共存可能だ

 ファイバーチャネルの業界団体FCIAは、HDD、SSD、NVMeを1つのアダプターでサポートできる機器を製造するようベンダーに働き掛けている。

 NVMe over TCPの柔軟性がもっと高く、ネットワークスイッチとコントローラーに柔軟な能力があれば既存のイーサネットLANを再利用できるため、アップグレードの範囲を最小限に抑えられる。

NVMe-oF導入の柔軟性

 NVMe-oFは広範な業界がサポートし、構成要素も理解されているため柔軟性が高い。

 ソフトウェア定義ストレージを追加し、NAS、SAN、DASでNVMeベースのストレージを使用できるようにする。そうすれば、ITチームはストレージ用のハードウェアとネットワーク用のハードウェアを供給するベンダーの数を減らすことができる。

 ただし、絶対的にパフォーマンスが重要であればスケーラビリティを犠牲にすることにはなるが、RDMAを選択することが可能だ。

NVMe-oFのユースケース

 NVMe-oFのユースケースを制限するのは予算だけだ。NVMeに移行してもメリットがないワークロードはほとんどない。

 ただし、システムの再設計を含むNVMe-oFのコストによって、NVMe-oFのユースケースはパフォーマンスが重要な分野に限定される。こうした分野には、主にHPCのワークロード、AIや分析(特に「Splunk」「Tableau」「MongoDB」などで実行される分析)などがある。

 「大半のストレージアレイベンダーは、既にNVMeストレージアレイを提供している。今後12カ月の間にますます多くのベンダーがNVMe-oF接続を提供するようになるだろう」とパルマー氏は述べる。

 NVMe-oFのデメリットは、基盤となるNVMeの欠点を共有することだ。フラッシュストレージのパフォーマンスは時間の経過とともに低下する可能性があるため、特性を考慮してソフトウェアを作成または再作成する必要がある。

 だが、これはNVMe-oF固有の欠点ではない。NVMeベースのストレージがエンタープライズサーバに既に広く普及している現在、多くのベンダーやITチームが既に対処している問題だ。

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