IBMとMicrosoftは量子コンピュータをクラウド経由で使えるようにする取り組みを進めている。
IBMによると、2025年までには自然に使える量子コンピューティングが現実になるだろうという。同社は2021年中にオープンソースの量子コンピューティングフレームワーク「Qiskit」を拡張し、より多くの回路の処理能力を高め、他のユーザーが量子プログラムをサービスとして利用できるように量子プログラムを格納する機能を追加する計画を発表した。これにより、企業が量子コンピューティングをサービスとして利用できるようになる可能性がある。
また2023年を目標に、クラウドベースのAPIで呼び出し可能なビルド済みランタイムを提供する計画も示している。
このロードマップについて、IBMは次のように説明している。「当社のソフトウェア戦略の原則はオープンソースツールの使用と作成を継続し、最終的にはそのツールを最高クラスのクラウドネイティブコンポーネントに変換することだ。これにより、当社は量子ソフトウェアのスケーリングと拡張を継続できる。その結果、ユーザーはセキュリティが確保された信頼性の高い方法で量子プログラムを実行できるだろう」
「IBMのソフトウェアスタックの一部を好みのクラウドにインストールして使うことも可能だ」
2021年2月初旬に量子コンピューティングを前進させる機能を発表したのはIBMだけではない。
クリスタ・スボア氏(「Microsoft Quantum」のゼネラルマネジャー)は、Microsoftのクラウドベース量子コンピューティングサービスのパブリックプレビューを明らかにした。「当社のハードウェアパートナーであるHoneywell Quantum SolutionsとIonQが提供するイオントラップ型量子システムを使えば、クラウドで量子コンピューティング機能にアクセスできる」
このパブリックプレビューに参加すると、Microsoftの1Qbit(量子ビット)の「ソルバー」も利用できる予定だとスボア氏は話す。これらのソルバーは量子の原理を適用するアルゴリズムで、既存のCPU、GPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)ベースのハードウェアで実行できる。
同氏は次のように補足する。「『Azure Quantum』により、化学、医学、金融、物流といった分野の問題解決に向けた研究が加速する」
一部の企業にとって、これらはクラウドベースの量子コンピュータが今後4年以内にはITアーキテクチャにとって不可欠なコンポーネントになる可能性を示している。AIのトレーニングや推論にGPUとFPGAが利用可能になったとき、特にクラウド経由でアクセスできるようになったときに、そうしたアプリケーションの利用が急速に拡大した。同様に量子コンピュータによって現在解決不可能な問題の多くが解決する見込みがある。
IBMやMicrosoftらが行っている開発は、業界がエンタープライズソフトウェア市場に量子コンピューティングを提供する方法を例示している。だが短編動画「Quantum ethics」(量子の倫理)はリスクを浮き彫りにする。この動画に登場する専門家は、以前は解決できなかった問題が解決される意味と、量子コンピューティングの悪用や悪意を持った量子コンピューティングの利用を防ぐためにどのような規制を整備しなければならないかを社会が考える必要があると警告している。
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