GoogleとAWS、Microsoftは、自社のクラウドサービスの機能を複数のクラウドサービスまたはオンプレミスのインフラで実行するための製品群を提供する。その中から、Googleの「Anthos」を説明する。
クラウドサービスのメリットを評価しつつも、オンプレミスのインフラやレガシーアプリケーションを手放せない企業もある。法規制の要件や自社のシステム同士の接続性、通信の遅延に関する懸念は、企業がクラウドサービスへの完全移行に踏み切れない主な要因となっている。
こうしたクラウドサービスでホストできないアプリケーションを抱えるユーザー企業のニーズに応えるために、クラウドベンダーが開発したのが、クラウドサービスをオンプレミスインフラで利用可能にするハイブリッドクラウド製品/サービス群(以下、ハイブリッドクラウド製品群)だ。ユーザー企業はハイブリッドクラウド製品群を利用することで、専用ネットワークを使用してクラウドサービスとオンプレミスインフラの2つのインフラを連携させることができる。アプリケーションをクラウドサービスに移して運用するか、オンプレミスインフラでの運用を継続するかを選ぶことも可能になる。
本稿はハイブリッドクラウド製品群のうち、Googleの「Anthos」を紹介する。
クラウドサービスとオンプレミスインフラで、同じ操作性を実現することを目指すハイブリッドクラウドサービスがAnthosだ。ユーザー企業はAnthosを利用すると、Googleのクラウドインフラとオンプレミスインフラの双方で、コンテナオーケストレーター「Kubernetes」によりコンテナを運用できる。
AnthosはマネージドKubernetesサービスの「Google Kubernetes Engine」(GKE)で運用しているコンテナ群(コンテナクラスタ)を管理する。ユーザー企業はKubernetesを実行できる任意のサーバでAnthosを運用可能だ。
ユーザー企業は、複数のクラウドサービスを組み合わせたマルチクラウドでAnthosを利用できる。Anthos はGoogleの「Google Cloud Platform」だけでなくAmazon Web Services(AWS)の同名クラウドサービス群やMicrosoftの「Microsoft Azure」で運用しているKubernetesコンテナを運用するための機能を備える。そのためユーザー企業は特定のクラウドサービスにロックインされることなく、Kubernetesコンテナを運用できるようになる。
Anthosのユーザー企業は、クラウドサービスとオンプレミスインフラで稼働するKubernetesコンテナの管理や監視、セキュリティ対策、認証のためのさまざまなツール群を利用できる。例えばコンテナクラスタ管理ツールの「Anthos Config Management」やサービスメッシュの「Istio」、監視ツールの「Cloud Monitoring」、イベント駆動型のコンテナ実行ツール「Cloud Run for Anthos」などだ。Anthosの主要機能である「Migrate for Anthos」は、クラウドサービスまたはオンプレミスインフラの仮想マシンで稼働するレガシーアプリケーションをKubernetesコンテナに移行する作業を自動化する。
より多くのユーザー企業がAnthosを利用できるようにするために、GoogleはCisco Systems、Dell EMC、NetAppといったハードウェアベンダーとパートナー関係を結んでいる。これらのパートナーはAnthosの実行に適したハイパーコンバージドインフラ(HCI)を提供する。
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