“次世代「SD-WAN」”に欠かせない「AI技術」「5G」「クラウド」との関係「SD-WAN」の注目すべき7つのトレンド【後編】

SD-WAN製品はITのさまざまな変化を受けて変わってきた。今後はどのような機能強化があるのだろうか。4つのポイントを紹介する。

2021年06月24日 05時00分 公開
[Lee DoyleTechTarget]

 ITの進化とともに、仮想化技術でWANの運用管理を効率化する「SD-WAN」(ソフトウェア定義WAN)製品にも変化が起こると考えられる。中編「“次世代『SD-WAN』”の理解に欠かせない『SASE』『SD-Branch』とは?」に続く本稿は、SD-WAN製品の変化に関わる4つの動向を紹介する。

動向1.「自動化」「AI技術」とSD-WAN

 SD-WANベンダー各社は、機械学習などのAI(人工知能)技術によってネットワークを自動化する魅力を語ってきた。だが現時点では、その話通りに自動化の機能を取り入れた製品は多くない。2021年は、SD-WANベンダーが「自動化を強化する」という約束を果たし始めるだろう。その目標は、セキュリティポリシー、QoS(Quality of Service)、アプリケーション、ユーザー、デバイスを一元的に管理する仕組みを用意し、IT担当者がアプリケーションの速度低下などの問題を迅速に特定して修正できるようにすることだ。

動向2.実用的なWANとしての「5G」

 「5G」(第5世代移動通信システム)が、固定回線のブロードバンドと同様のデータ伝送速度を無線回線によって実現するようになる。5Gはプロビジョニング(配備)が容易であるため、企業は5Gを活用すれば新しい拠点のネットワークを迅速に立ち上げることができる。2021年には、少なくともWANのバックアップと信頼性の確保のため、SD-WAN接続回線の一つとして5Gを利用する動きが出てくるだろう。5Gサービスの競争が激化することで無制限データ通信プランの料金は下がり、5GによるWAN接続の魅力はさらに増すと考えられる。

動向3.マルチクラウド接続の強化

 IaaS(Infrastructure as a Service)やSaaS(Software as a Service)にアプリケーションを移行する企業の動きが広がる中で重要になるのは、拠点から特定のクラウドサービスに効率よくアクセスするためのインターネット接続手段を用意することだ。SD-WANベンダーは、主要なIaaSベンダーやオフィススイート「Microsoft 365」(Office 365)を提供するMicrosoftなどのSaaSベンダーと協力することで、クラウドサービスへのアクセスを簡素化し、接続を高速化する方法を提供してきた。

 SD-WANベンダーは2021年も、より細やかなアクセス制御やQoS向上を実現するために、クラウドベンダーとの協力関係を強化するだろう。例えばIaaSベンダーは、エッジコンピューティング戦略の一環として、ユーザーにできるだけ近い場所でクラウドに接続するための「PoP」(Points of Presence)を構築する。一方のSD-WANベンダーは、トラフィックを効率的にPoPに流すための制御機能をSD-WAN製品に追加することで、一貫性のあるQoSの実現を目指す。

動向4.マネージドサービスの成長

 SD-WAN市場拡大の第1波は、ITに対して先進的なユーザー企業が積極的に導入を進めたことが背景にあった。ベンダーがマネージドサービスと併せて提供するSD-WAN製品の導入が第2波を後押しするだろう。

 自社の拠点やデータセンターへの接続に関する課題の解決を外部委託できるSD-WAN製品のマネージドサービスは、人気になる可能性が高い。SD-WAN製品の導入は、特に中小企業やITへの投資をできるだけ抑制してきた企業にとっては、依然として複雑だ。SD-WAN製品のマネージドサービスであれば導入障壁が低くなる。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news058.jpg

アドビ、Adobe Firefly機能搭載の「Adobe Express」モバイル版アプリを一般提供
アドビは、生成AI「Adobe Firefly」の機能を利用できる「Adobe Express」モバイル版アプ...

news141.jpg

2度あることは3度あった GoogleのサードパーティーCookie廃止再延期にアドテク各社がコメント
Googleは2024年末までに完了する予定だったWebブラウザ「Chrome」でのサードパーティーCo...

news148.jpg

天候と位置情報を活用 ルグランとジオロジックが新たな広告サービスを共同開発
ルグランとジオロジックが新たな「天気連動型広告」を共同開発した。ルグランが気象デー...