“どこでもできる仕事”は海外へ
「テレワーク」普及で“高給取り”ほど失業の危機に? その理由とは
英国の非営利組織が発表した報告書は、企業のテレワーク導入が進むことで、一部の仕事に従事する人が失業の危機にさらされると指摘する。どのような仕事が該当するのか。なぜ失業の可能性があるのか。
長時間の通勤や、スーツの手入れに掛かる高額なクリーニング料金の支払いを避けたい求職者は、フルタイムのテレワークに就くことが望ましい。だが新しい報告書によると、テレワークで世界のどこにいても従事できる「エニウェアジョブ」(Anywhere Jobs)に就く人は、職を失うリスクがある。
英国に本拠を置く非営利組織Tony Blair Institute(Tony Blair Institute for Global Changeの名称で事業展開)は2021年6月、調査報告書「Anywhere Jobs: Reshaping the Geography of Work」を発表した。同報告書は、働く場所を選ばないホワイトカラー(知的・技術労働者)の高給職の仕事をエニウェアジョブと定義。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)で導入が進んだテレワークが、こうしたエニウェアジョブに就く人を失業の危機にさらすと指摘する。
テレワーク普及が高給取りから職を奪う“あの理由”
雇用市場のオフショアリング(海外への業務委託)移行リスクを分析した同報告書によると、英国全体の仕事の18%はエニウェアジョブだった。特にロンドンと英国南東部におけるIT、金融、専門サービスの仕事は、アウトソーシングまたはオフショアリングのリスクにさらされている。これらの仕事に従事している人は英国で590万人いる。
報告書が指摘した英国における失業リスクについて、同書の筆頭著者であるジーガー・カッカド氏は「米国にも当てはまる。だが若干異なる」と述べる。カッカド氏はTony Blair Institute for Global Changeで生産性と革新の責任者を務める。
英国と米国の違いは、米国の広さと内部に存在する地域による賃金格差だ。「例えばベイエリアとアラバマ州の田舎では労働賃金に違いがある」とカッカド氏は言う。「テレワークを採用することで、企業は低コストな地域でテレワーカーを雇うことができるようになった」(同氏)
米労働統計局が2020年5月に発表した賃金統計データによると、例えばカリフォルニア州で働くソフトウェア開発者の年収の中央値は13万5930ドルだ。アラバマ州では、同じ仕事の年収の中央値は9万8530ドルと、約3万ドル以上少なくなっている。
“オフショアリング熱”は長続きしない可能性も
報告書によると、企業はコストを削減し、より多くの求職者から人材を採用するために海外に仕事を移す可能性がある。バングラデシュやウクライナなどにあるコーディングセンターは「大規模なテレワークへの移行を、先進国にある企業から仕事を得るためのチャンスだと見なしている」とカッカド氏は語る。
米国は国の規模が大きく、国内でも地域ごとに賃金格差がある。そのため「オフショアリングへの業務移行はすぐには進まない」とカッカド氏はみる。ただし「テレワークを巡る国際競争に注意する必要がある」と同氏は続ける。
「テレワークの普及とIT人材の不足は、オフショアリングの新しい波を解き放つ」。アウトソーシング調査会社、Everest Groupの創設者兼CEOであるピーター・ベンドール・サミュエル氏はこう語る。
一方でサミュエル氏は、オフショアリングのトレンドは長続きしない可能性があるとも話す。従業員とより密接に連携し、生産性を高めるために、企業は近接した地域または少なくとも同じタイムゾーンにIT部門とエンジニアリング部門を配置する必要があると同氏は主張する。「労働者の近接性は、オフショアリングのコスト削減をはるかに上回る大きな生産性の向上をもたらす」(同)
人材不足が解消された場合、仕事を海外に移す傾向は「弱まる可能性がある」とサミュエル氏は指摘。米国国内におけるテレワーカーの雇用の拡大は、オフショアリング移行の傾向を抑制するとみる。
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
なぜワンキャリアは障害復旧を3時間から1時間以内に短縮できたのか -
製品資料
自社のDevSecOpsはどこまで進んでいる? 進捗を測る指針“成熟度モデル”とは -
製品資料
実際に悪用される脆弱性は4%前後 優先的に対処すべき脆弱性を把握するには? -
事例
三菱ケミカルが脆弱性への迅速な対応フローを実現した方法とは? -
技術文書・技術解説
MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
2
ただなのに「12時間以内の復旧」も要求 無償OSSに商用レベルを求める企業の末路
-
3
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
4
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
5
「HDD終了」は本当か 巨大クラウド2社が下した大容量フラッシュへの決断
-
6
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
-
7
「業務改善とツール活用」に関するアンケート
-
8
「ERP(統合基幹業務システム)の導入・活用」に関するアンケート
-
9
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
10
「ビジネス用のPC導入」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
属人化や仕様バグはなぜ起きる? AI時代に必須のドキュメント文化の作り方
-
2
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
中小企業必見、Microsoft 365でゼロトラストセキュリティを実現する方法
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
5分で分かる「AI駆動開発エージェント」 要件定義から設計・実装・テストまで
-
8
動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは
-
9
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
10
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー