「『5G』値下げ競争」早くも勃発 それでも通信事業者が稼ぐ“奥の手”とは「5G」でのマネタイズの難しさ

通信事業者各社は「5G」を刺激剤に、新たな伸びを見せようとしている。アジアを中心に早くも料金の値下げ競争が起こる中、5Gを安定した収益源とするために通信事業者が取り得る策とは。

2021年10月27日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 世界各国で「5G」(第5世代移動通信システム)によるネットワークへの接続が急速に進んでいる。調査会社Juniper Researchによると、世界における5G接続の総数は2021年の3億1000万件から、2026年には32億件に跳ね上がる見込みだ。

 Juniper Researchは2021年9月、5G関連市場の動向を分析したレポートを公開した。それによるとアジア太平洋地域が2026年までに、世界の5G接続の60%以上を占めるようになる。ユーザーが5Gを使って快適にネットワーク接続ができるようになるには、大容量のデータ処理を可能にするネットワーク最適化やミリ波(30-300GHzの周波数)といった技術の普及が鍵を握ると同社はみている。

 レポート執筆に携わったJuniper Researchのデイブ・ボウイ氏は、「日本、中国、韓国の通信事業者は軒並み、携帯料金を値下げし、5Gの利用を加速させている」と述べる。値下げによって、5Gによる1接続あたりの平均売り上げは2021年の29ドルから、2026年には17ドルに下がると同社は予測する。

値下げ競争に直面しても、通信事業者が「5G」で稼ぎ続けるすべは?

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 通信事業者は売り上げを確保するために、ネットワーク最適化の自動化を中心としたコスト削減策を講じる必要があるとボウイ氏は主張する。そうした中、通信事業者の有力な武器になり得るのは、人工知能(AI)技術によるネットワーク利用状況のリアルタイム分析だ。

 自動調整によってネットワークの遅延を最小限に抑えることで、通信事業者はユーザーにストレスを感じさせない通信インフラを構築できる。Juniper Researchによると、通信事業者はやや高めの料金プランを用意し、「遅延の少ない接続」を武器にユーザーに提案すれば、売り上げの減少を和らげられる。

 5Gの急速な利用拡大を受け、通信事業者は5Gの「スタンドアロン構成」の商用化を進めている。スタンドアロン構成では、通信事業者は5G基地局に5G専用のネットワーク設備を設け、通信品質を高めるとともに、高速なネットワーク接続を可能にする。Juniper Researchはスタンドアロン構成によって、通信事業者は遠隔医療やモバイルゲームといった、大量データを処理しなければならない用途での収益化が見込めるとみる。

 2021年8月、NokiaとTaiwan Mobileは、5Gのスタンドアロン構成で700MHz(n28)と3500MHz(n78)の周波数帯を同時に使い、安定した高速通信を実現したと発表した。

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