「KIOXIA FL6」は、キオクシアの技術力を詰め込んだストレージクラスメモリを採用したSSDだ。FL6のNANDフラッシュが容量的に不利なSLCなのはなぜか。なぜSLCでなければならなかったのか。
キオクシアが「Intel Optane」に匹敵する「KIOXIA FL6」を発表した。同社の3Dメモリ技術「BiCS FLASH」とSLC(シングルレベルセル)のNANDフラッシュを応用したストレージクラスメモリ「XL-FLASH」を搭載したSSDだ。
キオクシアが目指すのはコスト上の競争力だろう。同社はFL6シリーズの価格を明らかにしていない。だがコモディティフラッシュストレージを使うことから、3D XPointのOptaneよりも安価になると考えて間違いない。
SLCは第1世代のNANDフラッシュとして市場に登場したが、汎用(はんよう)ストレージ向けとしてはMLC、TLC、QLCなどに取って代わられている。
SLCは1セル当たり1回しか電荷をかけないためNANDフラッシュの中では最高速で、寿命が最も長い。だが容量は最も少ない。FL6シリーズの当初の容量は800GB、1.6TB、3.2TBになる予定だ。これはOptane SSD P5800Xと同じだ。
SLCの容量には限界がある。だが、キオクシアが目指しているのはパフォーマンスだ。
FL6はセルを96層に階層化し、16本の並列バスでアクセスできるようになっている。PCIe 4.0接続で、読み取りスループット6.2GBps、書き込みスループット5.8GBps、読み取り時150万IOPS、書き込み時40万IOPSを実現し、レイテンシは読み取り時も書き込み時も数十マイクロ秒以下だという。これは読み取りスループット7.2GBps、書き込みスループット6.5GBps、150万IOPS、レイテンシ6マイクロ秒を実現する「Optane SSD P5800X」に近い。
SLCは5年保証の長い耐久性をFL6シリーズにもたらす。一般的なQLC SSDの寿命は約1年にすぎない。
Samsungの「Z-SSD」もSLCを採用している。この製品は2019年のリリース以来ほとんど変わっていない。「SZ985 Z-SSD」は48層のSLCによって読み取りスループット3.4GBps、書き込みスループット3GBps、読み取り時75万IOPS、書き込み時17万IOPSを実現する。これはFL6シリーズのパフォーマンスを大幅に下回る。
Z-SSDは速度が約2分の1のPCIe 3.0で接続する。4チャネルを備えるため、レイテンシは読み取り時20マイクロ秒、書き込み時16マイクロ秒だ。
キオクシアは同様のスループットのSSD「CM6」シリーズを2020年にリリースしている。これは96層のTLCフラッシュだった。TLCフラッシュを使ったことで耐久性に限界があり、データベースなど書き込みが集中する用途ではOptaneに後れを取った。
アナリスト企業TrendForceによると、SSDメーカーとしてキオクシアは市場シェア18.3%で2位につけているという。首位は市場シェア34%のSamsungだ。
Western Digital(市場シェア14.7%)は製品開発に200億ドル(約2兆2700億円)を投資してSamsungの地位を脅かそうとしている。また、キオクシアはWestern Digitalの買収ターゲットになっている。
Intel(市場シェア6.7%)はNANDフラッシュをSK hynix(市場シェア12.3%)に売却し、Optane最優先の取り組みを倍増する予定だ。
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