業務プロセスの改善や自動化を支援するプロセスインテリジェンスの分野で、RPA各社が買収を活発化させている。Automation AnywhereによるFortressIQ買収の話題に関連して、業界再編が進むRPA業界の動向を解説する。
RPA(ロボティックプロセスオートメーション)ベンダーのAutomation Anywhereは2021年12月、プロセスディスカバリー製品ベンダーであるFortressIQを買収する正式契約を締結したと発表した。プロセスディスカバリーとは、業務プロセスの中で自動化が可能なステップを特定する技術や手法を指す。なおAutomation AnywhereとFortressIQは、買収にかかる費用を開示していない。
独立系RPAベンダーとしてUiPathと並ぶ有力企業と見なされているのがAutomation Anywhereだ。同社は人工知能(AI)技術を搭載したビジネスプロセス自動化ツール「デジタルワーカー」を提供している。デジタルワーカーは、特定のタスクを自動化するだけでなく、特定の職務に関連する一連の作業を自動化する。
Automation AnywhereはFortressIQの買収によって、AI技術を搭載したクラウドRPAシステム「Automation 360」を進化させようとしている。具体的には、プロセスディスカバリー機能やインテリジェンス機能を強化することで、ユーザー企業があらゆるシステムやアプリケーションでAutomation 360を活用できるようにする。ユーザー企業がこのツールを使えば、どの業務プロセスが自動化できるか、もしくは自動化すべきなのかを迅速に特定できるようになる。
「FortressIQは(Automation Anywhere製品の)RPAの力をブーストさせる」と、Automation Anywhereの最高執行責任者(COO)であるマイク・ミクッチ氏は話す。「プロセスディスカバリー機能を活用し、自動化の対象となる業務プロセスを新たに特定してRPAに取り込むことで、真の効率化を効果的に実現できる」(ミクッチ氏)
RPAを補完する技術に「プロセスインテリジェンス」がある。プロセスインテリジェンスとは、業務システムのイベントログを基に業務プロセスを分析して改善する「プロセスマイニング」と、プロセスディスカバリーを組み合わせたものだ。Automation Anywhereはプロセスインテリジェンスの具体的な機能として、FortressIQの買収で得たプロセスディスカバリー機能を生かすとみられる。
大手RPAベンダーが株式公開前にプロセスインテリジェンスを自社のポートフォリオに加えるケースがある。Automation Anywhereの競合であるUiPathも2019年10月、米ニューヨーク証券取引所への上場前にプロセスマイニングベンダーのProcessGoldを買収した。Kryon Systemsをはじめとする他のRPAベンダーも、自社のRPAツールにプロセスインテリジェンス機能を搭載している。
FortressIQは今回の買収において興味深いポジションにいる。同社はワークフロー自動化ツール「Power Automate」を持つMicrosoftや、Automation Anywhereと競合するRPAベンダーBlue Prismと技術提携している。ユーザーコミュニティーサイトに投稿された内容や報道によると、Blue PrismはプライベートエクイティファンドのVista Equity Partners Managementに買収される可能性がある。2020年にはMicrosoftがRPAベンダーのSoftomotiveを買収し、Power Automateのユーザーにローコードシステムを提供できるようになった。
「Automation AnywhereがFortressIQを買収して一つの会社になると、MicrosoftやBlue Prismとのパートナーシップの優先順位は下がる可能性が高い」と話すのは、業務自動化とAI技術に特化したコンサルティング企業RPA2AI Researchのアナリスト、カシュヤップ・コムペラ氏だ。Power AutomateやBlue Prism製品のユーザーは、プロセスプランニングのための長期的な戦略を立てる必要があるとコムペラ氏は指摘する。
FortressIQの創業者兼CEOであるパンカジ・チャウドリー氏は「他社とのパートナーシップも素晴らしいものだが、Automation Anywhereに買収されたことでユーザー企業にさらなる価値を提供できる」と述べる。ユーザー企業が求めているのは、自動化できる業務プロセスの発見から業務自動化の実現までを一手に引き受けることのできる企業であり、パートナーシップだけでは難しいとチャウドリー氏は考えている。
新製品・新サービスや調査結果、セキュリティインシデントなど、米国TechTargetが発信する世界のITニュースをタイムリーにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
企業がビジネス規模を拡大し、サプライチェーンやビジネスパートナーとの協業が進んだことで従来型のリスク/コンプライアンス管理の限界が露呈しつつある。リスク管理を次のステップに進めるためには、これまでと異なる仕組みが必要だ。
Lenovoでは、顧客デバイスのライフサイクル管理を支援するDevice as a Serviceを世界中に提供している。しかし、そのオペレーションは複雑であり、顧客エクスペリエンスを高めるために改善が必要だった。同社が採った改善策とは。
セキュリティリスクが増大している今日において、社内のセキュリティ教育は必須のタスクとなっている。しかし、セキュリティ教育それ自体が目的化してしまい、確実な効果を上げられていないケースも多い。
日々進化するサイバー攻撃から自社を守るためにも、時代の変化やトレンドに応じてセキュリティ教育を見直すことが必要だ。その実践ポイントを「目的の再確認」「教育の実施状況の分析」「理解度・定着度の測定」の3つの視点で解説する。
データ活用人材を社内で育成するためには、「DX推進者」や「分析実務者」などの役割に応じたスキル定着が欠かせない。効果的な育成を行う方法として、あるデータ活用人材育成サービスを取り上げ、その特徴や事例を紹介する。
2025年の「IT導入補助金」で中堅・中小が導入すべき2つのツール (2025/3/31)
申請業務のシステム化が難しい理由とその解決策とは (2024/9/27)
運用・管理はお任せ 生成AIを安全に活用できるRPAプラットフォーム (2024/5/16)
オンライン研修で情報処理安全確保支援士の取得と維持を支援 (2024/2/1)
セキュリティ対策にDX 情シスが「やりたくてもできない」状況から脱するには? (2024/1/29)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。