逆襲のCitrix――クラウドで出遅れ、「DaaS」強化で大逆転へ投資ファンドによる買収が及ぼすCitrix製品への影響【前編】

仮想化ベンダーのCitrixが投資ファンドに買収される。これにより、同社はDaaS事業をより充実させる可能性がある。

2022年03月18日 05時00分 公開
[Maxim TamarovTechTarget]

 Citrix Systemsは、投資ファンドVista Equity Partners ManagementとEvergreen Coast Capitalの傘下企業になる。両投資ファンドが2022年1月に発表した。仮想化大手であるCitrixの製品ラインアップは、さまざまなデバイスでアプリケーションをシームレスに利用するためのデジタルワークスペース製品群「Citrix Workspace」を中心に構成されている。

 米TechTargetの調査部門であるEnterprise Strategy Group(ESG)のアナリストであるマーク・ボウカー氏は、競合仮想化ベンダーのMicrosoftやVMwareと比較したときのCitrixの強みとして「Citrix microapps」を挙げる。Citrix microappsは、CitrixがCitrix Workspace専用に開発し、同製品と一体化させたシンプルなワークフローソフトウェアだ。

 「Citrixは競合他社と比べて、デスクトップ仮想化製品群をクラウドサービス化するのに出遅れた」とボウカー氏は指摘する。今回の買収に伴って同社の注力分野が、オンプレミスインフラ向け製品からクラウドサービスへと加速度的に移行すると同氏はみる。

Citrixの“反撃”が始まる

 Vista Equity Partners ManagementとEvergreen Coast Capitalは、Citrixを買収してBI(ビジネスインテリジェンス)ベンダーのTIBCO Softwareと合併させると発表した。投資ファンド両社は2022年下半期に買収を完了させ、業務用ソフトウェアの大手ベンダーを誕生させようとしている。

 「買収によって、高い成長の見込める事業分野に投資したり、イノベーションを生み出したりする財務的な余地が高まった」。Citrixの事業戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントであるティム・ミナハン氏はこう語る。

 今回の買収は、Citrix WorkspaceをはじめとしたCitrixのDaaS(Desktop as a Service)事業の改善につながると、IT調査会社Gartnerのアナリスト、トニー・ハーヴィー氏はみる。Gartnerの予測によると、DaaS市場は2025年まで毎年18%成長する。「『DaaS事業に投資して成長する』という狙いがCitrixにはある」とハーヴィー氏は話す。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news119.jpg

Metaの広告はますますAI中心に 新たなツール「最適化スコア」とは?
Metaの2025年ビジネス注力領域とAIを活用したツールをはじめとした広告ソリューションの...

news045.jpg

マーケターの仕事はなくなる? AIが変えるソーシャルメディアの未来【後編】
AIが変えるソーシャルメディアの未来について5つの視点で考察。後編では「創作の民主化」...

news006.jpg

日本のリテールメディアはまず店舗から 今こそ知りたい「インストア広告」の現在
今回はインストア(店舗内)広告のデジタル化という観点から、リテールメディアに注目し...