COVID-19のパンデミック後の世界では、人事部門が研修や人材開発ツールにかける費用が減る可能性がある――Gartnerの人事調査責任者がこう考える理由と、企業が今後人事関連ツールに求める要素は何か。
前編「“コロナ離職”はパンデミック後も終わらない――Gartnerが言い切る理由」に続いて後編となる本稿は、調査会社Gartnerの人事調査責任者であるブライアン・クロップ氏に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が職場の役割や人事部門の業務に対して、どのような影響を及ぼしたかを聞く。
―― 人事部門は今後、レコグニションツール(注)や従業員エンゲージメント向上ツールといった人材開発ツール、研修にかける費用を増やすでしょうか。
ブライアン・クロップ氏(以下、クロップ氏) 離職率が高い間は、採用活動にかかる費用は増加すると考えている。ただし研修や人材開発ツールなど従業員の能力開発にかける費用が増えるかどうかは定かでない。
能力開発のための研修やツールは、従業員の定着を図る方策として利用できる。一方で離職率の高まりによって、従来よりも研修や能力開発ツールの費用対効果(ROI)が低くなる可能性がある。例えば従業員の平均在籍期間が6~7年だったときに実施した研修と比べると、4~5年しか勤めるつもりがない従業員に対して実施する研修のROIは低い。投資費用の回収期間が7年から4年へと短くなり、ROIも低くなることを考慮すると、投資額を減らすのが妥当な判断だと考えられる。
※注:従業員がお互いの功績を認め、承認や称賛や送り合うためのツール。金銭報酬よりも表彰制度に近いものを指す。
―― 雇用主は人事部門向け採用支援ツールにどのようなことを期待していますか。
クロップ氏 雇用主の関心事は2つだ。1つは採用支援ツールを使用して採用プロセスをどのように加速できるか。もう1つは「労働市場の状況を常に把握する」という新たな役割を果たせるツールはあるのかどうかだ。例えば企業にとって有能な人材の採用が、いつ必要になるのかが正確には分からないとする。こうしたときに「どのようにして継続的に有能な人材の関心を集め続けるか」といった課題を解決するツールが求められている。
―― 米国では、ジョー・バイデン大統領政権下で進んでいた一定規模以上の企業に対するワクチン接種の義務化を、合衆国最高裁判所が覆しました。米国の雇用主は、これをどのように感じていると考えますか。動揺しているのか、ほっとしているのか、それとも無関心なのでしょうか。
クロップ氏 概して言えば、雇用主は動揺している。雇用主は、ワクチン接種を終えた従業員の方がそうでない従業員よりも多くの点で優れた労働力だと考えている。理屈の上では、ワクチン未接種の従業員に比べて、ワクチンを接種した従業員の方が長期にわたる欠勤のリスクが低く、企業が負担する医療費を抑えることができるからだ。だが雇用主は、従業員にワクチン接種を強制する責任は負いたくないとも考えている。バイデン大統領政権によるワクチン接種の義務化は、雇用主が責任を負わずにワクチン接種を従業員に強制できるまたとない機会だった。雇用主は今、ワクチン接種の必要性を明言して、その理由を説明する責任を負わざるを得ない立場にある。この取り組みは、容易ではない。
―― 2022年の夏までに職場環境はどのような状況になっていると考えますか。
クロップ氏 2022年の夏までには、少数の従業員が断続的に出社するようになると予想する。だがテレワークの拡大により、ナレッジワーカーが自宅で仕事をする能力は高まった。一部の従業員は出社を希望するかもしれないが、それは少数派だ。出社する従業員の数はまばらだろう。2022年6月の段階でも、勤務形態が突如として出社勤務に戻ることはないと考える。
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