知らないと恥ずかしい環境用語「ネットゼロエミッション」とは? 実現するにはデータセンターの「ネットゼロエミッション」を実現するには【前編】

サステナビリティを目指す企業の取り組みの中、データセンターの「ネットゼロエミッション」実現は重要な役割を果たす。そもそもネットゼロエミッションとは何なのか。具体的な対策は。

2022年06月09日 05時00分 公開
[Allyson LarcomTechTarget]

 2021年10月〜11月、気候変動に対処するための国家間連携の強化を目指した「国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議」(COP26)が英国で開かれた。気候変動を受け、企業にとってより一層「サステナビリティ」(持続可能性)を高め、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量を削減することが重要になっている。特にデータセンターは大量の電力を消費するため、大きなてこ入れが必要だ。

 企業はまず、ファシリティ(建物や設備)の設計やシステムの運用方法の工夫によって、データセンターのサステナビリティがどのように向上するかを理解する必要がある。本稿は、システムを環境に優しい形で構築・運用する「グリーンIT」(グリーンコンピューティングとも)の課題や可能性を探りつつ、企業がサステナビリティを実現するために何をすべきかを考える。

データセンター設計にサステナビリティを取り入れる方法 どうすれば?

 気候変動による影響の深刻化を背景に、各国の企業が2050年までに「ネットゼロエミッション」(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指す動きを活性化させている。ネットゼロエミッションを実現するためには、データセンターの電力の使用効率を高めたり、再生可能エネルギー由来の電力を利用したりする工夫が必要だ。

 ネットゼロエミッションを実現するために、企業がデータセンターの新設や増設に際して実行できることには、例えば以下がある。

  • 空気のコンテインメント(囲い込み)と液体冷却を使用して電力を節約する
  • サステナビリティの基準を満たしたハードウェアや無停電電源装置(UPS)、冷却システムを導入する
  • UPSや冷却システムの消費電力量を削減するために、サーバを液体に浸して冷やす「液浸冷却」といった技術を採用する
  • データセンターの電力源として燃料電池を導入したり、太陽光や風力といった再生可能エネルギー由来の電力に切り替えたりする

 上記で取り上げたのは、ネットゼロエミッションに向けたファシリティに関する取り組みだ。これに加えて企業はシステムに関する下記の取り組みに注力すれば、データセンターのネットゼロエミッションを実現しやすくなる。

  • IT機器の電力使用量を記録し、将来の電力使用量を予測する
  • サーバを適切なサイズに設定し、使用率の低下や電力の浪費を防ぐ
  • HVAC(冷暖房空調設備)システムの負荷を軽減するためにIT機器の温度を監視する
  • 電力効率に優れたIT機器を導入する

 特に大規模なデータセンターの場合、人工知能(AI)技術を搭載した監視ツールを使用して設備管理の自動化を図ることも有効だ。企業はアンテナを張ってグリーンIT技術の進化について情報を収集し、既存の技術とどう連携できるかを考える必要がある。


 後編は、データセンターのネットゼロエミッション実現を目指した企業の取り組みを紹介する。

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