「スマートNIC」入門 CPUに代わる「DPU」「IPU」で理解するスマートNICによるプロセッサの負荷分散【第1回】

プロセッサ分野ではCPUからGPUへの分業が進むだけではなく、プロセッサを搭載する「スマートNIC」の活用が進む兆しが見えている。CPU代替のプロセッサが台頭する理由や、スマートNICの理解に不可欠なポイントは。

2022年06月24日 05時00分 公開
[Saqib JangTechTarget]

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 NIC(ネットワークインタフェースカード)の帯域幅はかつての10Mbpsから100Gbps、400Gbpsへと拡大し、サーバの通信速度を高速化させてきた。その進化系として「スマートNIC」が登場した。スマートNICはCPUの役割を肩代わりするプロセッサを搭載する。

 CPUの役割が多様化しその負担が大きくなる中、その課題を解消するハードウェアとしてスマートNICや、CPUに代わるプロセッサの利用が広がる可能性がある。まず強調しておくべき点は、スマートNICは単なるNICではないことだ。

「スマートNIC」の重要な役割とは? 台頭する「DPU」「IPU」で理解する

 一般的に、スマートNICはストレージやネットワーク、セキュリティに関する処理をCPUからオフロードする。CPUの負荷はその分軽くなり、CPUは重要な仕事に専念できるようになる。スマートNICの代表的な用途としては、

  • パケットキャプチャー(分析を目的とした通信データ採取)
  • ネットワークの管理・可視化
  • テレメトリー(システム稼働データの収集と監視)

などがある。

 コストとメリットのトレードオフが、スマートNIC利用時の基本だ。CPUを重要な仕事に集中させるためにスマートNICのメリットを最大限引き出したいのであれば、その分コストは高くなる可能性がある。

 近年は通信データの処理に特化した新しいプロセッサが台頭した。それはスマートNICのプロセッサであり、スマートNICの登場と切り離せない関係にある。そのプロセッサを、CPUベンダーは

  • DPU(データ処理装置)
  • IPU(インフラ処理装置)

などと呼んでいる。汎用(はんよう)の演算処理をCPUが担い、高負荷の演算処理をGPU(グラフィックス処理装置)が担うのと同じように、プロセッサ分野の分業が進んでいるのだ。

スマートNICの選択

 データセンターにスマートNICを導入する際は、製品のメリットを吟味して選定する必要がある。スマートNICは製品によって機能や帯域幅、価格が大きく異なるためだ。CPUのオフロードしたい仕事や、利用するアプリケーションの特性を踏まえて適切なスマートNICを選択しよう。さまざまな用途や活用法を想定した新世代のスマートNICが登場している。例えば以下の通りだ。

  • OEM(相手先ブランド製造)ベンダーなど、各種ハードウェアを統合して提供する事業者向けのスマートNIC
  • ネットワークやセキュリティの特定機能を迅速に導入できる、プログラムの書き換え可能な集積回路「FPGA」(Field Programmable Gate Array)搭載のスマートNIC
  • 企業やクラウドサービス事業者のデータセンターにおけるストレージ、ネットワーク、セキュリティの処理を担うDPU搭載のスマートNIC

 第2回以降は、スマートNICのベンダー3社の製品をそれぞれ具体的に紹介する。

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