世界の有能テレワーカーを獲得する「これまでとは違う人材採用方法」とは?米国で進む「越境採用」の光と影【後編】

米国企業の間で、全世界の労働市場を視野に越境採用を進める動きがある。国際的な採用について前向きな企業がある一方で、事態を慎重視する意見も根強い。賛成派と反対派、それぞれの見解は。

2022年07月19日 05時00分 公開
[Patrick ThibodeauTechTarget]

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 「国境を越えた人材採用が必要になってきている」。人事コンサルティング会社Workplace Intelligenceでマネージングパートナーを務めるダン・ショーベル氏は、こう語る。

 採用市場では「人が職に合わせるよりも、職が人に合わせるようになっている」とショーベル氏は言う。仮に欠員を十分に補充できないとしても、企業は成長が求められる。「そのため企業は、応募者の幅を広げる必要に迫られている」と同氏は指摘する。

世界の有能人材を“あの人材採用術”で獲得 一方で問題点も

 拠点の所在国だけでなく、世界中に対象を広げて企業が人材採用をするのは、「従業員エンゲージメント(組織との信頼関係)、企業文化、生産性を維持するためにITを活用できることを知っているからだ」とショーベル氏は話す。

 180カ国での採用を可能にするHR Tech(人事とITの融合)のスタートアップ(新興企業)Oyster HRで、共同設立者兼CEOを務めるトニー・ジェーマス氏によると、「世界規模のテレワークを可能にする人材採用」の方法は、従来の方法と異なる点がある。その一つは「スキルベースの採用」であることだ。

 ジェーマス氏によれば、企業がITエンジニアを採用する場合、履歴書に頼るのではなく、スキルテスト(候補者のITスキルのレベルを確認するテスト)の成績に基づいて採用可否を判断する傾向にある。Oyster HRのサービスを通じて採用された人材の約20%は、こうした審査を経ている。約500人の従業員を抱えるOyster HRは、月に約1万2000件の採用を成功させている。

 米国外で勤務する従業員は、必ずしも英語が流ちょうに話せなくてもよい。時差があるので、コミュニケーションは文章を主軸にしている。従って大抵の業務は、英語の読み書きが堪能であれば十分遂行できる、とジェーマス氏は話す。

 Oyster HRによると、国際的な採用は概して、ITスキルを持つ人材を見つけることを目的としている。しかし調査会社Janco AssociatesのCEOビクター・ジャヌレイティス氏は「IT部門の管理職の多くは、外国の従業員を採用することに消極的だ」と話す。文化的な問題や管理上の問題が起こる可能性があるからだ。「越境採用をした従業員のテレワークは、われわれの労働文化を知っている人であれば問題なく進められる。われわれのやり方やその理由を知らない外国人の場合、管理の面で厄介なことになる」(ジャヌレイティス氏)

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