デジタルトランスフォーメーション(DX)には3つの段階があると専門家は指摘する。ただしDXのメリットを享受できる「第3段階」に到達できる企業は、ごくわずかだという。その理由は何か。
コンサルティング会社Third Stage Consulting Groupの創設者兼最高経営責任者(CEO)、エリック・キンバーリング氏によると、デジタルトランスフォーメーション(DX)のプロセスは、ロケットの打ち上げから上昇、周回軌道(天体の周囲を回る物体の軌道)への投入までの段階的なプロセスに似ている。
具体的には、DXは以下の3つの段階に分類できる。
第3段階に到達すると、組織は「『デジタルユートピア』に入ることができる」とキンバーリング氏は語る。デジタルユートピアとは、人工知能(AI)技術や産業用IoT(IIoT:産業用モノのインターネット)といった革新的な技術を利用してビジネスを変革するためのプロセスと組織構造、インフラの準備が整った状態を指す。
キンバーリング氏は、「多くの企業はこの段階に到達できない」と警告する。大きな理由は、非現実的な理想を抱き、DXのプロジェクトにかかる労力、時間、リソース、コストを過小評価するからだ。「5〜10年後ではなく、2、3年後をめどに企業に貢献できる技術活用法を実用的、現実的に考える必要がある」と同氏は話す。
ベンダーは「最新機能を備えた製品」という形で、先進的な技術を企業に提供する。だがキンバーリング氏は、「ベンダーが提供する新機能」と「企業がそれを生産的に利用する能力」との間にはしばしば隔たりがある、と指摘する。
「ITは確かに、ビジネスの問題を解決するためのツールであり、ビジネスを支援する役割を持つ。だがパズル全体の一つのピースにすぎない」とキンバーリング氏は言う。同氏によるとDXの成功には、ビジネスプロセスを改善したり、企業文化、従業員、組織設計を変えたりすることも必要だ。
第3回以降は、DXの成否を分けるポイントを具体的に説明する。
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