従業員のオフィス出社を再開させようとするAppleは、対面での業務から生まれる利点を生かすことができるのか。同社の元従業員は“ある理由”から、その実現が難しいと主張する。その理由とは。
オフィスに出社して対面で業務をすることによる従業員同士の交流は、セレンディピティ(偶然のひらめきや発見)をもたらしたり、新製品や新機能のインスピレーションを生みやすかったりする利点がある。オフィス出社の義務化に踏み切ろうとしているAppleは「こうした利点を生かすことが難しい」と、Appleの元従業員であるヤネケ・パリッシュ氏は考える。パリッシュ氏はその理由として
と説明する。同氏は同社従業員の連帯組織「AppleTogether」のリーダーを務めた。
「私たちは山のように機密保持契約を結んでいた」とパリッシュ氏は説明する。社内の廊下を挟んだ別チームの仕事内容さえも分からない場合があったという。「私自身も、自分のプロジェクトについて誰かに話せば職を失うことになる」と同氏は持論を展開する。
2022年8月にApple経営陣は、ハイブリッドワーク(テレワークとオフィスワークの組み合わせ)のパイロットプランの実施を従業員に通達した。同社経営陣は「当社の革新的な企業文化にとって、対面の共同作業は不可欠だ」と主張する。
Appleは2021年にも、従業員をオフィスに復帰させようと試みていた。その当時のハイブリッドワークプランは、2022年春に新型コロナウイルス感染症が再び流行したことから、延期となっていた。感染者数の動向は予測不可能だ。MicrosoftやAmazon.comなど他のIT大手もオフィスワークの再開に苦戦している。
後編は、テレワーク廃止の動きに潜む危うさを整理する。
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