無線LAN規格「Wi-Fi 6E」や「5G」(第5世代移動通信システム)の利用に関して、6GHzの周波数帯に関する問題が議論を呼んでいる。無線通信は今後どうなるのか。
無線LAN規格「Wi-Fi 6E」(IEEE 802.11ax)は、周波数帯として2.4GHz帯や5GHz帯に加えて、6GHz帯を使用できる。今後、無線LANを有効に使い切れるかどうかという点で鍵を握るのは、この周波数帯だ。6GHz帯の問題に関しては、無線LANだけではなく「5G」(第5世代移動通信システム)の利用においても、別の視点で議論が巻き起こっている。
業界団体のWi-Fi Allianceは各国の規制当局や政策立案者に対し、6GHz帯の1200MHz幅(5925〜7125MHz)の周波数帯全体を、Wi-Fi 6E用に開放するよう働きかけている。Wi-Fi 6Eを有効に利用するには、より広い帯域幅を使えるようにすることが重要になるためだ。
通信事業者の業界団体GSMA(GSM Association)が2022年8月に公開したレポート「The 6 GHz IMT Ecosystem」は、5Gの利用に関して6GHz帯の問題を取り上げた。ブロードバンド(広い帯域幅による通信)やIoT(モノのインターネット)、データが社会のさまざまな側面に浸透しつつある。そうした中でモバイルネットワーク、特に5Gを有効に活用するためには、周波数帯の利用に関する長期的な計画についての議論を各国が進める必要がある、という内容だ。
GSMAのレポートは、6GHz帯全体を免許不要で使用できるようにすることに対して懸念を示す。周波数帯は、各国が保有する貴重な資源だ。それをライセンス不要で利用できるようにすると、政府や通信事業者が5G分野に投資する価値を損なう恐れがある。それは「どのようなメリットももたらさない」とレポートは警告する。
6GHz帯の周波数帯をライセンス供与することについて、各国が足並みをそろえることも重要だとGSMAはみる。だがこの帯域を何に使うかという点で、各国の方針には既に違いが生じている状況だという。
GSMAがライセンス供与にこだわるのには理由がある。理由の一つは、ソーシャルインクルージョン(社会的弱者を排除しない取り組み)のために、6GHz帯を利用する通信サービスを通信事業者が手頃な価格で提供する必要がある、という点だ。GSMAはもう一つの理由として、都市や交通、工場といった社会のインフラとなる分野で、6GHz帯の5Gを有効に活用する必要があるからだと主張する。
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