パブリッククラウドのシステムを別のインフラに移行させる動きがアジア太平洋地域(APAC)で起きていることが、IDCの調査で分かった。企業がインフラを選定する際に、何が問題になっているのか。
調査会社IDCの調査によれば、アジア太平洋地域(APAC)の企業がシステムをパブリッククラウド(リソース共有型のクラウドサービス)から、別のインフラに移行させる傾向がある。企業はなぜそのような選択をするのか。
IDCは2023年2月に調査レポート「CIO Technology Playbook 2023」を公開した。IDCはPCベンダーLenovoと半導体ベンダーAdvanced Micro Devices(AMD)からの委託で、APACのCIO(最高情報責任者)とIT意思決定者906人を対象に調査した。
この調査によれば、過去12カ月の間にパブリッククラウドからプライベートクラウド(リソース専有型クラウド)や従来型のデータセンターにシステムを移行させたと答えた回答者は、63%だった。
AMDでAPACおよび日本担当マネージングディレクターを務めるピーター・チェンバース氏は、企業がプライベートクラウドを重視する理由の一つとして、セキュリティを挙げる。「システムをパブリッククラウドからプライベートクラウドに移行させることで、自社の方針に沿った一貫性のあるセキュリティ対策が可能になる」(チェンバース氏)
Lenovoのインフラサービスグループでオーストラリアおよびニュージーランド(ANZ)担当マネージングディレクターを務めるマヌ・メヘラ氏は、重要なシステムを配置する際の注意について次のように指摘する。「パブリッククラウドは事業継続性の要件は満たしやすいが、データの保管や移動に伴うコストが高くなる可能性がある」
クラウドサービスとオンプレミスのインフラを組み合わせたハイブリッドクラウドや、複数のクラウドサービスを併用するマルチクラウドは珍しくなくなった。一方でメヘラ氏は、「データ戦略とクラウド戦略とを連携できている企業は依然として目立たない傾向にある」と述べる。
チェンバース氏によると、データが発生する場所の近くでデータ処理をする「エッジコンピューティング」への移行も今後は重要になるという。IDCの調査では、回答者の88%がエッジコンピューティングをすでに利用しているか、12カ月以内に利用すると回答した。主な用途として挙がったのは、リアルタイムの顧客分析によるオムニチャネル(さまざまな接点を通じて顧客とコミュニケーションをする手法)体験の提供や、品質管理と品質改善の自動化、資産の追跡などだ。
第4回は、APACの企業のCIOが、人工知能(AI)技術に何を期待しているのかを整理する。
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