F1の出場チームにはコストキャップという予算の制限が付きまとう。その中でCIOが成果を出すには、どのような選択をすればいいのか。Aston Martin F1の取り組みを紹介する。
自動車レースのフォーミュラ1(F1)世界選手権の出場チームの運営は、国際自動車連盟(FIA)が定めたコストキャップ(1チームが車体に使うことができる予算の制限)に左右される。Aston Martin Aramco Cognizant Formula One Team(以下、Aston Martin F1)は、予算をどのような取り組みに投入しているのか。第3回に続き、本稿はCIO(最高情報責任者)クレア・ランズリー氏の話を基に、データ分析に関する同チームの取り組みを紹介する。
「コストキャップを念頭に置きながら、チームが投資できるIT予算を慎重に検討している」とランズリー氏は述べる。より賢く資金を使うために忘れてはいけないのは、ITの利用を合理化できているかどうか。さまざまな技術が台頭する中で、システムはすぐに古くなってしまいがちだ。時代遅れになったシステムの利用を必要最小限にとどめると同時に、「ビジネスパートナーに最良の価値を提供できているかどうかを、常に自問している」とランズリー氏は語る。
既存システムの費用対効果と効率を保つことに加えて、ランズリー氏はデータ分析とAI技術活用の方法を模索している。人工的に発生させた風を模型に当てて空気の流れを再現、観測する「風洞」や、コースの画像分析にAI技術が使える。同氏は「データを活用することで車体のパフォーマンスを効率的に予測できる」と説明する。
こうした技術を使いこなすには、適切なスキルを持つ人材の登用が必要だ。その課題はありつつも「AI技術を使って生み出すデータがあれば、テストや開発プロセスの一部を大幅に短縮できる」とランズリー氏は期待を寄せる。
Aston Martin F1が管理するデータ量は、ランズリー氏の概算によると400TBに上る。データ活用を検討するに当たっては、F1の外の世界で起きる変化も考慮する必要がある。例えばウクライナ侵攻を理由に、ロシアではF1の開催ができなくなった。将来的にロシアでの開催が復活する可能性を踏まえて、ITチームはレースごとのタイムや天候条件といった過去のデータをいつでも使えるようにしておく必要がある。
データ分析における課題は、使えるデータが膨大にあることだという。「すぐに必要なデータなのかどうか、必要ならばどこに保存すべきかなどを考える必要がある」とランズリー氏は話す。データを管理するためのコストも勘案しなければならない。「ITでできることの選択は、コストキャップに左右される」と同氏は語る。
第5回は、Aston Martin F1がAI技術を使って何が実現できるようになったのかを紹介する。
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