世界最高峰の自動車レースF1で結果を残すことは簡単なことではない。出場チームのCIOが、チームの結果に貢献するために強化している取り組みとは。
自動車レースのフォーミュラ1(F1)世界選手権に出場するチームAston Martin Aramco Cognizant Formula One Team(以下、Aston Martin F1)の転機は、2020年1月に訪れた。10億ドル以上の資産を保有するビリオネア、ローレンス・ストロール氏がAston Martin F1の母体であるAston Martin Lagonda Global Holdingsの大株主となったのだ。
この体制の下、Aston Martin F1は成長に向けてどう動いているのか。第2回に続き、本稿はCIO(最高情報責任者)を務めるクレア・ランズリー氏の話を基に、同チームが目標達成に向けて注力する取り組みを紹介する。
ストロール氏はAston Martin Lagonda Global Holdingsへの出資後、自身が保有していたRacing Point F1 Teamを、同社のレーシングチームに改変。レーシングチームの名称をAston Martin F1に改称した。
Aston Martin F1は2021年2月、5年以内にF1のチャンピオンになるという目標を発表した。2022年のコンストラクターズチャンピオンシップ(車体を製造するコンストラクターの選手権)では同社は7位という結果に終わった。ランズリー氏は「2023年も長期的な目標の達成に向けて尽力する」と語る。
ランズリー氏によると、ローレンス氏によるチームの買収で、相当な額の出資、新しい人材の獲得、チーム内部での業務プロセスの変更といった変化が起こったという。その中で同氏も学びを得た。「この業界で何より重要なのは時間だということが分かった」(ランズリー氏)
結果を速やかに出せという要求からは逃れられないし、その要求は厳しいものだという。ランズリー氏は「F1に出場する車体の信頼性や性能といった基本的な要素を確保するとともに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、よりスマートにイノベーションを推進することがCIOとしての私の仕事だ」と語る。そのプロセスの一環として、チームの順位上昇につながるようなイノベーションを、社内および信頼できるパートナーとの間で模索している。
「車体設計のシミュレーションの観点からも、データが示す傾向を把握する観点からも、サーキットで優位に立つためにはITを活用する必要がある」とランズリー氏は語る。その上で同氏は「データに基づく未来の予測が全ての鍵を握る」と指摘する。
第4回は、Aston Martin F1が進めるデータ分析の取り組みを紹介する。
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