英高速鉄道HS1が“トラブルなし”でシステム刷新を完結できた理由鉄道に学ぶプロジェクト成功の秘訣【後編】

英国のネットワークベンダーであるTelentは、国際高速鉄道HS1の主要駅の通信システム刷新や、新システム導入を成功させた。障害を抑えることに成功した理由は、何だったのか。

2023年05月25日 05時15分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 英国の国際高速鉄道「High Speed 1」(HS1)は、4駅のアナログ通信システムをIP化するプロジェクトを終えた。このプロジェクトはネットワークベンダーであるTelent Technology Services(Telenet)が主導した。

 Telenetは同プロジェクトで通信のIP化に加えて、幾つかの新システムの設計と開発をした。例えば、駅マネジメントシステムの「Mica」は、さまざまなアラートや障害、連絡事項、監視カメラの映像などを1つのシステムに集約し、駅員が集中管理できるようにする。その他、IP電話や構内アナウンスのシステムも開発した。

 Telenetはこうして開発した複数の新システムを導入するに当たって、障害の発生を抑える必要があった。HS1の鉄道は24時間運行しているため、障害は乗客の混乱につながるからだ。

歴史的建造物の遺産アドバイザーとも協力

 障害を抑えるため、Telentは鉄道業界のシステムインテグレーターであるFourway Communicationの支援を受けた。TelentとFourway Communicationは、通信のIP化や新システムの導入時に、既存システムに影響がないかどうかを確認しながら非常に緻密な設計とテストに取り組んだ。それが関係者の混乱を抑えることにつながった。

 他にTelenetが重視したのは、各関係機関との協力だ。関係機関は新システムを導入した鉄道事業者だけでない。セントパンクラス国際駅(St Pancras International)は歴史的建造物でもあることから、地元議会や遺産アドバイザーとも何度も連絡を取り合い、要件を整理した。

 「プロジェクトの一環として、複数のステークホルダーのニーズや要件に確実に応じることが重要だった」と、Telenetのステーションコミュニケーションズプログラムマネジャーのディーン・クラーク氏は述べる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)による複雑な事態や混乱にも対処しなければならなかった。

 「このような困難な時期に、駅業務への影響を抑えながら通信システムを更新し、乗客がタイムリーで正確な情報を引き続き受け取れるようにしたことを大変誇りに思う」とクラーク氏は述べる。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia マーケティング新着記事

news132.jpg

ハロウィーンの口コミ数はエイプリルフールやバレンタインを超える マーケ視点で押さえておくべきことは?
ホットリンクは、SNSの投稿データから、ハロウィーンに関する口コミを調査した。

news103.jpg

なぜ料理の失敗写真がパッケージに? クノールが展開する「ジレニアル世代」向けキャンペーンの真意
調味料ブランドのKnorr(クノール)は季節限定のホリデーマーケティングキャンペーン「#E...

news160.jpg

業界トップランナーが語る「イベントDX」 リアルもオンラインも、もっと変われる
コロナ禍を経て、イベントの在り方は大きく変わった。データを駆使してイベントの体験価...