世界のデジタルデバイド(情報格差)問題の効果的な解決手段として、業界団体が目を向けるのが「Wi-Fi」だ。具体的にどのような場面での活用が見込まれるのか。
世界中でインターネット接続は普及しつつある一方で、小規模の街や過疎地はサービスを受けられない傾向にある。無線LANの業界団体Wireless Broadband Alliance(WBA)は2022年11月、報告書「Rural Wi-Fi Connectivity: Challenges, Use Cases and Case Studies」を公開した。報告書の中でWBAは、デジタルデバイド(情報格差)解消に役立つ経済的で効果的な技術の一つとしてWi-Fiを挙げている。
報告書によると、インターネット接続が不十分もしくは全く利用できない地方に住んでいる人は世界に約10億人以上存在する。こうした地方では、遠隔診療やオンライン教育といったデジタルサービスの利用、テレワークを前提とする就業機会の獲得が大幅に制限される。Wi-Fiをどのように活用できる可能性があるのか。
UNICEF(国際連合児童基金)とITU(国際電気通信連合)は2020年12月、レポート「How Many Children and Young People Have Internet Access at Home?」を公表。2010年から2020年のデータを基に、87の国を対象に実施したインターネット接続に関する調査結果を公開した。これによると、全世界の3〜17歳の3分の2に相当する約13億人が、自宅にインターネット環境がない。推定では、このうち大半が南アジアやアフリカ地域の発展途上国に住んでいる。
国連副事務総長のアミナ・モハメド氏は、「情報格差は先進国でも発展途上国でも根強く残っており、不平等の新たな芽になる恐れがある」と警告する。米国のバイデン政権はこの問題に対処するため、地方への高速インターネット導入用途として5億200万ドルの拠出を発表している。
WBAの報告書は、「インターネット接続があると推定できる地域に住む49億人の中でも、状況にはばらつきがある」と指摘する。例えば、共有デバイスを複数人でシェアして利用していたり、接続速度が制限されていたりなど、快適なインターネット接続を享受できていない人は数億人に上るという。さらに世界最貧国の中には、インターネット接続に1人当たりの国民総所得(GNI)の20%以上のコストがかかる国もある。
WBAは報告書で、さまざまなユースケースやケーススタディーの紹介を通して、地域固有の課題に対処するために、Wi-Fiをどのような用途に活用できるのかを調査している。具体的には、以下の分野におけるWi-Fiの活用を取り上げている。
中編以降は、Wi-Fiが情報格差の解決手段に適する理由と、具体的な活用事例を詳しく紹介する。
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