エンドユーザー主体のデータプライバシーやデータ所有権の保護を目指して、Web開発者のティム・バーナーズ・リー氏が提唱するWebアーキテクチャが「Solid」だ。その仕組みをざっくりと解説しよう。
データへのアクセス権限を誰が所有するか、誰がそのアクセス権限を認定するかといった「データプライバシー」を保護するための法律として、欧州連合(EU)は「一般データ保護規則」(GDPR)、米国は「カリフォルニア州消費者プライバシー法」(CCPA)を制定した。こうした法規制とは別の手段で、個人のデータプライバシーを守ろうとする取り組みがある。インターネットを通じてWebページを相互に結び付ける「World Wide Web」(Web)の開発者、ティム・バーナーズ・リー氏が提唱した「Solid」がそれだ。
SolidはWebアーキテクチャであり、エンドユーザーがデータを分散管理する仕組みだ。Solidのネットワークは中央集約型ではなく、エンドユーザー同士がピアツーピア(P2P:一対一)で通信する。Solidを構成するサーバである「Solid Server」として、個人や企業が利用できるオープンソースサーバが幾つか存在する。バーナーズ・リー氏が立ち上げた、Solidの開発を主導するための企業であるInruptは、独自のSolid Serverを提供している。
エンドユーザーのデータを保管する分散型データストアを「Pod」と呼ぶ。PodはPC、モバイルデバイス、サーバ、クラウドストレージなどにデータの読み書き権限を与え、データを保存できるようにする。Solid Serverは複数のPodを持つ。Pod内のデータをアクセス制御によって管理したり、複数のPodからデータを集約したりすることができる。Pod内にあるデータを操作するには、標準化団体World Wide Web Consortium(W3C)の勧告に基づいたプロトコルを使わなければならない。
バーナーズ・リー氏は、Solidが初期段階にあり、開発者コミュニティーがまだ小規模であることを認識している。当面の課題は、開発者やベンダーを引き付けて、Solidコミュニティーを発展させることだ。
Solidの支持者は、データをホストするSolid Serverを第三者が構築・運用して、収益化する動きが広がることを望んでいる。これはメールサービスプロバイダーやクラウドストレージベンダーで実績がある方法だ。Solidが抱える課題としては、比較的少数のエンドユーザー、特に医療や金融といった高度な個人情報を取り扱うエンドユーザーからの信頼を得ることが挙げられる。
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