Webアプリケーション開発で活躍する「JavaScript」と「TypeScript」は、よく似た名称を持つものの、さまざまな違いがある。その中でも特に重要な違いとは何か。実例を用いて解説する。
「JavaScript」と「TypeScript」は、どちらもWebアプリケーションのフロントエンド(エンドユーザーの目に見える部分)とバックエンド(エンドユーザーの目に見えない部分)の開発を支えるコンピュータ言語だ。両者は名称だけではなく機能的にも似ている点があるものの、明確な違いもある。JavaScriptとTypeScriptの共通点と相違点とは。
スクリプト(簡易プログラム)言語のJavaScriptと、Microsoftが開発を主導するオープンソースのプログラミング言語TypeScriptには、重要な違いがある。それは変数に対して「型」(数値や文字列といったデータの種類)を指定する仕組みである「型システム」の有無だ。
JavaScriptには型システムがないため、変数の型を自由に変えることができる。型システムのあるTypeScriptでは、「コンパイル」(TypeScriptソースコードからJavaScriptソースコードへの変換)時に「strict」というオプションを設定することで、変数の型が適切かどうかを厳密にチェックすることが可能だ。このため特に複雑なWebアプリケーションの開発では、TypeScriptの方がソースコードを管理、保守しやすい。
型システムの有無は、ソースコードの保守性や一貫性に大きな影響を及ぼす。型システムのないJavaScriptと、型システムのあるTypeScriptのソースコードを見比べると、その影響を把握しやすい。
JavaScriptで、数値と文字列を扱う変数を宣言する方法は次の通りだ。3行目は文字列をJavaScriptではエラーにならない。
let foo = 1 // 変数「foo」を宣言し、数値「1」を代入 let bar = "text" // 変数「bar」を宣言し、文字列「text」を代入 bar = 123 // 文字列を代入したbarに数値「123」を代入
TypeScriptで、上記と同様の内容を記述した例を以下に示す。3行目はTypeScriptではエラーになる。
let foo: number = 1 // 数値を扱う型(number)の変数「foo」を宣言して、数値「1」を代入 let bar: string = "text" // 文字列を扱う型(string)の変数「bar」を宣言して、文字列「text」を代入 bar = 123 // 文字列を扱う型の変数barに数値を代入(エラーが発生)
型システムのないJavaScriptは、変数に対して宣言時に代入したデータと、宣言後に代入したデータの型が違うことを許可する。型システムのあるTypeScriptでは、変数に対して型を指定すると、その変数には指定した型とは異なるデータを代入できない。
Webアプリケーションの開発に、型システムは大きな影響を与え得る。型システムのないJavaScriptでは、変数がある時点で格納しているデータが、どの型なのかを厳密にチェックしにくい。そのためJavaScriptでのWebアプリケーション開発では、拡張や更新、トラブルシューティングの際にエラーが発生しやすくなる。
型システムは、変数の型と、それが扱うデータの型が一致しているかどうかを確かめる「型チェック」を可能にする。そのため型システムのあるTypeScriptでは、統合開発環境(IDE)にソースコードの検証やリファクタリング(動作を変えずに内部構造を書き換えること)機能を搭載できるようになる。
JavaScriptなど型システムのないプログラミング言語では、IDEでの型チェックの実装は難しい。そのためJavaScript用IDEと比べると、TypeScript用IDEはソースコードの生成やトラブルシューティング、リファクタリングを支援する機能を、より多く搭載する傾向にある。
次回は、JavaScriptの歴史を振り返る。
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