「5G」は結局、無駄だったのか? 投資が成功しない2つの問題露呈する5Gビジネスの現実【前編】

「5G」を使ったビジネスの収益性に疑問が投げ掛けられている。さまざまな用途に活用できる可能性のある5Gの何が問題なのか。現状を整理する。

2023年08月21日 05時00分 公開
[Deanna DarahTechTarget]

 移動体通信事業者(MNO)は「5G」(第5世代移動通信システム)に莫大(ばくだい)な資金を投じてきた。現状のままでは、そうした投資が無駄に終わる可能性がある。5Gの市場規模が拡大しつつある中で、何が問題として浮上しているのか。

結局、5Gは無駄だったのか?

 5Gは消費電力の抑制を考慮しているため、「4G」(第4世代移動通信システム)など前の世代の通信技術と比べると、運用コストは減ると専門家は考えている。一方で「5Gは利益をもたらさないのではないか」という懸念が、MNOの現場で生じている。

 通信事業の業界団体GSM Association(GSMA)は、2022年2月に公開したレポート「The Socio-Economic Benefits of Mid-Band 5G Services」で、5Gは2030年までに全世界で9600億ドルの売上高を生み出すと予測した。これだけの市場規模を背景にして、通信事業者は5Gのインフラやサービスに集中的に投資してきた。

 5G分野への投資が集まっていることについては、ReutersやBloombergをはじめとした主要報道機関が報じている。こうして投資が過熱する動きが見られる一方で、投資があまり利益を生んでいないのではないかという見方も出ている。

 コンサルティング会社PwC(PricewaterhouseCoopers)は、通信業界の顧客は5Gの技術や市場についてほとんど理解しておらず、それが5G事業の利益確保を阻む原因の一つになっているという見方を示す。混乱しているのは顧客だけではない。MNO自身、さまざまな企業とパートナー関係を構築しつつ、5Gによる収益をうまく分配することが簡単ではないと感じている。5GのSLA(サービスレベル契約)を定義し、それを保証するのが簡単ではないことも、問題を深刻にする一因だ。

 PwCが2023年1月に世界のCEO4410人を対象に実施した調査では、通信事業者のCEOの46%が「ビジネスの採算が10年以内に取れる見込みはない」と回答した。

 5Gビジネスのマネタイズ(収益化)を考える上で、PwCは通信事業者が直面している2つの問題を指摘している。

  1. 5Gの活用にはコストが掛かり過ぎる場合がある
  2. 固定無線アクセス(FWA)やIoT(モノのインターネット)といった5Gの用途は収益化がしにくい

 FWAやIoTといった用途は広い地域で活用可能だと考えられる。ただしそれを実現するためのコストが掛かる上に、そうした用途のサービスから得られる売上高は限定的になる可能性がある。5Gビジネスの収益性については、まだ曖昧(あいまい)な部分が残されているのが現状だ。


 中編は各種用途のコストを踏まえて、5Gの収益性をどう考えればよいのかを整理する。

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