「オンプレミス回帰」はなぜ起きる? 企業がまず知るべきだった問題「オンプレミス回帰」が起きている4つの理由【中編】

クラウドストレージに移行したデータやアプリケーションをオンプレミスのストレージに戻してしまう「オンプレミス回帰」を選ぶ企業には、さまざまな理由がある。物理的、ビジネス的な観点において、何が足りなかったのか。

2023年11月13日 05時00分 公開
[Paul KirvanTechTarget]

 コストや運用管理の簡略化などを理由に、さまざまな企業がオンプレミスのストレージからクラウドストレージに移行している。ところがそれと同時に、クラウドストレージからオンプレミスのストレージに戻る「オンプレミス回帰」も発生している。それはなぜなのか。企業がオンプレミス回帰を選択する“4つの理由”のうち、2つ目と3つ目を紹介する。

「オンプレミス回帰」の理由2

 ストレージを別の場所に移すということは、オンプレミスのストレージを切り離すことを意味する。そうしたストレージの例はSAN(ストレージエリアネットワーク)、NAS(ネットワーク接続ストレージ)、RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks)機器、光学ストレージなどだ。

 ただしオンプレミスのストレージからクラウドストレージに移行して、データセンターのストレージを一掃したとしても、空いたスペースをより効果的に活用できるようになる可能性は、必ずしも高くはない。

 IT管理者が慎重かつ段階的に、オンプレミスのストレージからクラウドストレージへの移行を目指すならば、移行によって利用可能になるスペースの活用方法を事前に検討するとよい。移行によってストレージの運用管理部門やアプリケーション用が外部に移る点も考慮すべきだ。ビジネスの観点から、これらの資産を保有し続け、緊急時に使用できるようにしておくことが望ましい場合もある。

 コンピューティング技術が発展し、データ処理速度が向上したり、より少ない物理スペースでより多くの容量を確保できるようになったりする可能性がある。そうなれば、オンプレミスへの回帰が発生しても、物理スペースはそれほど必要ではなくなるはずだ。企業は利用可能なスペースを、より多くのストレージデバイスなど重要なシステムに活用できるようになる。

「オンプレミス回帰」の理由3

 データ保管の需要が高まり、企業がより多くのストレージ容量を必要とするようになった場合、クラウドストレージの導入は合理的な判断だ。特に緊急のデータ保存領域を確保する上で有効だ。通常はオンプレミスシステムで稼働させているアプリケーションの処理を、需要に応じて一時的にクラウドサービスに切り替える「クラウドバースト」を検討する場合は、クラウド移行前と移行後のそれぞれでコストを確認する必要がある。

 ストレージ容量の追加に掛かる時間も考慮すべきだ。クラウドベンダーが命令を出してから処理が完了するまでの時間(ターンアラウンドタイム)が長過ぎる場合、クラウドストレージの継続使用は望ましくない可能性がある。企業が緊急時に膨大なデータ容量を必要としない場合、あるいはオンプレミスのストレージで十分に対処できる場合、クラウドストレージを継続使用するのは得策ではない。

 クラウドストレージが優れた処理速度とストレージ容量を備えるのは確かだが、そうした利点を引き出すために企業は検討すべき項目がある。具体的には、クラウドストレージでオンプレミスのストレージと同等の処理速度を実現するために、現在のシステムとそこで稼働するアプリケーションを、どの程度リファクタリング(動作を変えないまま内部構造を修正すること)すべきかを確認しなければならない。リファクタリングに必要な時間と投資は、重要な検討事項となる。

 HDDや電源機器などのハードウェアの価格は概して下降し続けている。クラウド移行およびオンプレミス回帰は、技術的な要件とビジネス上の要件の両方を踏まえて決めなければならない。


 次回は、4つ目の理由を紹介する。

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