英国中央銀行、30年の「老朽システム」が障害でリプレースが“早急の課題”に国家的な金融システムのリプレース

イングランド銀行の即時グロス決済(RTGS)システムが、2023年8月にシステム障害を起こした。このシステムは英国における「金融取引の心臓部」であり、老朽化が課題になっている。

2024年01月26日 10時00分 公開
[Karl FlindersTechTarget]

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 イングランド銀行(Bank of England)は英国の中央銀行に当たる。同行の即時グロス決済(RTGS:Real-Time Gross Settlement)システムは1日当たり平均7750億ポンド相当の決済を処理しており、英国における金融システムの心臓部と言える存在だ。老朽化したそのRTGSを含む決済システムが2023年8月、大規模なシステム障害に見舞われた。

約30年動き続ける「金融取引の心臓部」

 RTGSは、中央銀行において金融機関同士が口座振替をする方法の一つだ。RTGSシステムは、証券または資金の決済を、決済指図1件ごとに直ちに実行する。英国ではCHAPSやBACS(Bankers’ Automated Clearing Services)などさまざまな銀行間決済の処理にRTGSシステムを利用する。イングランド銀行はRTGSシステムの目標稼働率を99.95%以上としている。

 そのRTGSシステムと大口決済システム「CHAPS」(Clearing House Automated Payment System)は、2023年8月14日(現地時間)の業務開始時から正午ごろまで稼働停止になった。イングランド銀行は同日16時45分にこのシステム障害が解消された旨を発表し、「本日のシステム終了時点で未処理の決済が残ることはない」と説明した。

 イングランド銀行がRTGSシステムの運用を開始したのは1996年のことだ。導入から27年が経過し、同行はRTGSシステムをリプレースする「一大プロジェクト」に取り組んでいるところだった。同行は、システム移行プロジェクトと今回のシステム障害については関連がないと見ている。システム障害の原因についてはサイバー攻撃に由来するものでもなく、単に「技術的な問題」だと同行は説明した。

決済システムのリプレース

 同行が進めているシステム刷新のプロジェクトは、大きく2つに分けられる。1つ目は金融機関が外国に送金する際のフォーマットの国際規格「ISO 20022」を導入するプロジェクト。2つ目は、英国の中央銀行として基幹決済システムをアップグレードするプロジェクトだ。新しい基幹決済システムは、2024年夏の稼働を目指している。

 ISO 20022導入プロジェクトの最初のマイルストーンは2023年6月に完了した。この段階では、従来のフォーマットとは異なるフォーマットでさまざまな金融機関とメッセージをやりとりできるようにシステムを変更しなければならない。そのためイングランド銀行だけではなく、ハードウェアとソフトウェアの変更を伴う「金融業界全体に及ぶ大掛かりなプロジェクト」だった。

 その次のマイルストーンは、RTGSの主要台帳に当たるRTGS基幹決済システムの置き換えだ。新システムは、レジリエンス(障害発生時の回復力)とセキュリティを向上させながら、さまざまな企業にとって使いやすくなるシステムになることを目指している。

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