2023年のストレージ市場では、ソフトウェアの開発は進んだものの、ハードウェアの技術開発は鈍化傾向にあった。ハードウェア面でストレージの革新的な新技術が登場しなかったのはなぜなのか。
2023年はストレージベンダー各社がパートナーシップを広げ、ソフトウェアの開発に力を注いだ。ハードウェア面で“画期的な新技術”を搭載したストレージ製品は登場しなかった。
「ハードウェアよりもソフトウェアに成長する余地があったと考えれば、ハードウェア面の停滞は必ずしも悪いことではない」。調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるブレント・エリス氏はこう語るが、ストレージ市場は楽観視できる状況とは言えない。背景には、ストレージ分野にお金が入ってきにくい状況がある。
ハードウェア開発が停滞した原因の一つとしてエリス氏が挙げるのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)による状況の変化だ。ユーザー企業は従業員のテレワークの要望に応えるために、クラウドサービスへの投資を増やし、ハードウェアへの投資を削減した。2020年から2023年にかけて、新しいハードウェアの需要が低下した。「パンデミックの結果、ユーザー企業内のITインフラのライフサイクルが変化した」とエリス氏は語る。
ストレージのハードウェア面でのイノベーション(技術革新)があまり見られなかった理由は他にも考えられる。ITコンサルティング会社Dragon Slayer Consultingの創設者兼プレジデントのマーク・ステイマー氏が挙げるのは以下の点だ。
ステイマー氏は、2020年はユーザー企業のハードウェアへの投資計画だけではなく、ストレージベンダーの資金調達や投資計画にも変化が起きた年だったと語る。同氏によるとストレージ分野のスタートアップ(設立後間もない企業)へのベンチャーキャピタル(VC)からの投資額は減り始め、その傾向は2023年に入っても続いたという。その原因となったのが、テレワークとオフィス勤務を組み合わせるハイブリッドワークや、人工知能(AI)技術分野でのスタートアップの増加だ。「ストレージ分野ではスタートアップに資金が渡らなければ、イノベーションが起きにくくなる」とステイマー氏は指摘する。
VCがストレージ技術に投資していた資金は、他の分野に投じられるようになっている。特にVCの積極的な投資が続いている分野が生成AIだ。調査会社Gartnerでアナリストとして働くジョセフ・アンスワース氏によると、ユーザー企業は業務におけるAI技術活用に力を入れ始めている。AI技術を活用するには、GPUやメモリといったハードウェアに関連するコストが発生する。「ユーザー企業のIT予算には限りがあり、全てをストレージに回すわけにはいかない」(同氏)。ストレージ市場に回る資金が減れば、ストレージベンダーが研究開発に費やせる資金も減る。
NAND型フラッシュメモリの価格急落など最近のストレージ市場の状況が、ストレージのハードウェア面のイノベーションにも影響を及ぼしているとアンスワース氏は語る。ストレージベンダーは技術開発をやめてしまったわけではないものの、資金不足によって開発に遅れが出る傾向にある。
次回は、ストレージハードウェア開発への投資の鈍化に加えて、ストレージ市場が直面している技術進化の限界について説明する。
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