6Gは早ければ2029年にサービスを開始するという予測がある。一方で5Gに失望したユーザーもいる。ユーザーにとって“期待外れ”にならないために、6Gには何が必要なのか。
「6G」(第6世代移動通信システム)に関して、さまざまな領域で研究開発や調査が進んでいる。市場調査会社Juniper Researchによる調査によれば、早ければ2029年に6Gのサービスがユーザー向けに提供開始になる可能性がある。
その一方で、「5G」(第5世代移動通信システム)が「期待外れだった」と感じるユーザーは珍しくない。6Gが期待値通りの次世代通信を実現するためには、まずは“5Gの失敗”を乗り越えなければならない。ユーザーはなぜ5Gに失望してしまったのか。
Juniper Researchは、6Gの成功には24GHz帯以上の「ミリ波」や100GHz以上を指す「テラヘルツ波」などの高周波数帯を扱うことによる技術的課題を克服する必要があると指摘する。
具体的には建物や障害物による干渉を抑えることだ。周波数は高くなるほど建物や障害物の影響を受けて接続が不安定になる。こうした特性から1つの基地局がカバーできる範囲が狭くなる。
ユーザーが「5Gを使えるエリアが足りない」「5Gはつながりにくい」と感じていたとしたら、通信事業者が5Gでこれらの高周波数帯をうまく活用できなかった可能性がある。Juniper Researchは課題を解決するために、反射板によって電波の反射角度を操作する「Reconfigurable Intelligent Surface」(RIS)への投資を推奨している。
通信事業者は6Gの提供には慎重になる可能性がある。それどころか、6Gを提供しないこともあり得る。フランスの通信事業者Orangeのエグゼクティブバイスプレジデント兼チーフテクノロジー&イノベーションオフィサーであるブルーノ・ゼルビブ氏は、次のように指摘する。「移動通信システムの世代交代は終わりに近づいていると見ることができる」。
ゼルビブ氏は、通信業界は転換期を迎えており、この先は業界が歩んできた歴史とは全く異なるものになると考えている。そのため、同氏は従来の携帯電話ネットワークが約10年ごとに変化するというパラダイムから抜け出し、継続的に製品やサービスとそのアップデートを提供してくべきだと考えている。
「ユーザーは、『4G』(第4世代移動通信システム)から5Gに移行してもあまり違いを感じなかった。実際には技術的には違いがあった。われわれはコミュニケーションマーケティングで失敗した」(ゼルビブ氏)
Orangeは、6Gが登場しても、それを顧客に売り込むつもりはないという。その代わりに、同社がどのように二酸化炭素排出量を削減し、遅延を改善し、IoT(モノのインターネット)を活用する機能を導入しているかを示していくとしている。
「通信事業者は、新しい移動通信システムの帯域幅ではなく、どのように効率性が生み出され、エネルギー消費量がどのように改善され、ネットワークの信頼性が向上するかということをアピールすべきだ」とゼルビブ氏は指摘する。
ゼルビブ氏の予測が実現するかどうかは別として、6Gが破壊的なものになることは間違いないだろう。フィンランドのオウル市で進んでいる研究の目的は、データドリブンで持続可能な未来社会をサポートする方法を検討することだ。これは、ほぼ瞬時で無制限の無線接続ができる仕組みによって可能になる。現状のネットワークには、これを実現する能力はない。“6Gによる輝かしい新世界”がどのようなものになるのかは注目に値する。
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