部下の仕事に細かく口を出すマイクロマネジメントはあまり好かれない。その対極にある「静かなマネジメント」は何がよいのか。調査を基に解説する。
「静かな退職」(クワイエットクイッティング)や「静かな解雇」(クワイエットファイアリング)が社会に広がりつつある。静かな退職とは、退職はしないものの必要最小限の業務しかしないこと。静かな解雇とは、従業員に正式な解雇通知を実施せず、従業員が自分から退職するような状況を作り出して会社から追い出すことだ。コンサルティング企業Gallupは2022年6月、米国企業にフルタイムおよびパートタイムで勤務する18歳以上の15091人にアンケート調査を実施した。その結果、回答者の半分以上が「静かな退職を実施している」と答えた。
静かな退職や静かな解雇に加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を経て生まれたキーワードが、「静かなマネジメント」(クワイエットマネジメント)と、それを遂行するための「静かなリーダーシップ」(クワイエットリーダーシップ)だ。静かなマネジメントとはどのような手法なのか。
ヘリコプターがホバリング(空中で停止すること)するように従業員を監視したり、業務に必要以上に関わり続けたりする上司と違い、業務の生産性を不必要に下げないように一歩引いて、従業員に業務を任せるのが静かなリーダーシップだ。
静かなリーダーシップの中核にあるのは、従業員に自主裁量権や信頼、柔軟性を与える姿勢だ。クレアモント大学院大学(Claremont Graduate University)に勤務していたレベッカ・ヨハンセン氏と同学の教授ポール・ザック氏は、2020年5月発行の学術誌『Frontiers in Psychology』に論文「Autonomy Raises Productivity: An Experiment Measuring Neurophysiology」を発表した。その内容は、自主性を高めることが従業員個人やチームのパフォーマンスに影響を及ぼすかどうかを調査したものだ。100人の被験者に実験した結果、生産性は平均で5.2%向上したという。
マイクロマネジメント(従業員の業務を細かく管理すること)を実施するマイクロマネジャーの存在は、静かな退職や離職の原因になり得る。求人サイトMonster.comを運営するMonster Worldwideが2023年8月に実施したアンケート調査によると、73%の回答者が職場の脆弱(ぜいじゃく)さを表す最大の危険信号として「マイクロマネジメント」を挙げた。46%が「マイクロマネジャーがいるなら退職する」と答えた。
従業員の働きぶりを細かくチェックしたり、進捗(しんちょく)状況に関する最新情報を絶えず求めたりするマイクロマネジャーとは異なり、静かなマネジャーは、従業員に自力で業務を進める余地を与える。
マイクロマネジャーの中には、頻繁に命令したり指示を出したりすることが従業員の助けになると信じている場合がある。一方で、過干渉を伴う管理は有害かつ無益になる恐れがある。ソフトウェア開発ツールやコミュニケーションツールを手掛けるInfragistics(Slingshotの名称で事業展開)がまとめたレポート「2023 Digital Work Trends Report」によると、「上司からの進捗確認や状況報告のための打ち合わせの頻度が高い方が業務の生産性が向上する」と答えた回答者は19%だった。同レポートは2023年4月~6月、Infragisticsの委託で市場調査会社Dynataが調査し、米国でフルタイム勤務する成人労働者305人が回答した。
静かなマネジャーは業務の開始時点から明確な目標を設定し、業務の遂行から一歩離れる傾向にある。マネジャーの側から情報やコミュニケーションを求めることはそれほど多くなく、プロジェクトの終了や報告の時点までフィードバックを控える場合もある。
後編は、静かなリーダーシップを実践するために必要なアクションを取り上げる。
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