「Python離れ」まで起きかねない“GIL廃止”の波紋PythonからGILを取り除く是非【後編】

「Python」の「GIL」廃止計画が、コミュニティーに波紋を広げている。技術的な課題について、PythonユーザーやPython創設者はどう考えているのか。

2024年09月27日 07時00分 公開
[Darcy DeCluteTechTarget]

 プログラミング言語「Python」において、データの整合性を保つ仕組み「GIL」(Global Interpreter Lock)が廃止されようとしている。GILを廃止することで、複数のCPUコアにまたがる処理が実行可能になる見込みだ。だがこの変更は技術的な課題だけでなく、Pythonコミュニティー全体に大きな影響を与える可能性があるという懸念の声がある。何が問題なのか。

Python離れが起きかねない「GIL廃止」の影響

会員登録(無料)が必要です

 GILの廃止が深刻な問題をもたらしかねない理由の、5つ目と6つ目は次の通り。

理由5.ユーザーが流出する可能性がある

 他のプログラミング言語から、GILを廃止したPythonに移行することは、不確実さを伴う。Pythonとそれを取り巻くツールはしばらく安定せず、PythonユーザーもGIL廃止の影響に対処するため、稼働中のPythonプログラムを書き直さなければならない。

 一方で「Mojo」など、ランタイム(実行環境)がPythonと互換性のあるプログラミング言語の中には、既にGILを廃止しているだけではなく、追加機能を提供しているものもある。現状の、GILが有効なPythonで記述したソースコードが問題なく動作する代替言語もある。PythonコミュニティーがGILを廃止すれば、不安定な状況を懸念したり、代替言語に魅力を感じたりしたPythonユーザーが、Pythonから離れることが懸念される。

理由6.単純にうまくいかない

 PythonからGILを廃止する際に起こり得る問題の一つは、恐らくうまくいかないことだ。「以前にも同じ試みがあったが、残念な結果に終わった。だから、私はGILの廃止にあまり力を入れたくない」――Pythonの生みの親グイド・バン・ロッサム氏は、2007年にこう発言した。2023年、コンピュータサイエンティストであるレックス・フリードマン氏のポッドキャストのエピソードで、ロッサム氏は当時に感じたことを繰り返した。専門家でさえ、GILの廃止がうまくいくかどうかに確信が持てていないということだ。


 PythonからGILを取り除く試みが成功することを願っているが、筆者にとってその試みは大きな間違いのように思える。

TechTarget発 エンジニア虎の巻

米国TechTargetの豊富な記事の中から、開発のノウハウや技術知識など、ITエンジニアの問題解決に役立つ情報を厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 アイティメディア広告企画

DevOps実践で起こり得る課題を解消し、DXを実現する方法とは?

DXを実現するためには、開発チームと運用チームのスムーズな連携が必要になる。これを実現する手法がDevOps だが、実践に当たってはいくつかの課題が存在する。本資料ではこの課題と解決策について解説する。

製品資料 株式会社SHIFT

5分で診断、正しいソフトウェアテストベンダーを選ぶための比較チェックシート

ソフトウェアテストをアウトソースするに当たってはベンダー選びが重要だが、自社に合うテストベンダーをどう選べばよいか分からない、という声もよく聞かれる。そこで、失敗しないベンダー選定の基準を、チェックシート形式で解説する。

製品資料 株式会社SHIFT

品質課題が残る我流テスト、第三者によるテストを導入したらどう変わる?

ソフトウェア開発ではテストを、開発エンジニアが自ら担当するシーンが散見される。ただ、専門知見を持たない人材が我流でテストしていては、開発品質の担保が難しくなる。この問題の解決には第三者によるテストが重要だ。

製品資料 株式会社SHIFT

課題山積のソフトウェア開発、テストを外注すべき5つの理由とは

DXの推進が叫ばれる中、その中核を担うソフトウェア開発の現場では、IT人材不足をはじめとする5つの課題が顕在化している。それらを解消し、ソフトウェアの品質を高める方法として注目されるのが、ソフトウェアテストの外注だ。

技術文書・技術解説 アイティメディア広告企画

クラウド活用の価値最大化のために、クラウドネイティブをどう取り入れる?

クラウドサービスは今や広く普及し、クリティカルなシステム領域のクラウド移行も進んでいる。このクラウドの利点を徹底的に活用する仕組みが「クラウドネイティブ」だ。この仕組みを、企業はどう取り入れるべきなのか。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...