「NaaSはSD-WANを“消滅”させるのか」の答えがイエスでもノーでもある理由NaaSかSD-WANか【後編】

NaaSを利用する動きは今後広がる見込みだ。ネットワークを管理する方法としてはSD-WANが主流だが、NaaSの拡大で状況はどう変わるのか。NaaS台頭による影響とは。

2024年09月27日 07時30分 公開
[Deanna DarahTechTarget]

 新しいネットワーク管理の方法として、ネットワークやそのインフラをサブスクリプション形式で利用する「NaaS」(Network as a Service)が注目されている。NaaSを利用することで、ユーザー企業はネットワーク機器を管理する必要がなくなる。「SD-WAN」(ソフトウェア定義WAN)が企業ネットワークの管理において重要な位置を占める中で、NaaSはどのような影響をもたらす可能性があるのか。SD-WANの存在は今後どうなるのか。

NaaSはSD-WANを消滅させるのか?

 NaaSが台頭してもSD-WANが消滅するわけではない。NaaSは、SD-WANによるWANの運用管理を委託するマネージドSD-WANを内包しているからだ。

 マネージドSD-WANを好む企業は珍しくないが、NaaSはより広い範囲を対象とするため、今後はNaaSを通してSD-WANを利用する企業が増えると考えられる。企業はSD-WANを単独で管理するよりも、NaaSのツールを介して他のネットワークサービスと統合的に管理したいはずだ。

 現状、企業はNaaSに興味を示しているものの、その採用は急激には進んではいない。中小企業も大企業も、コスト増や運用の複雑性から、NaaSの導入に慎重な姿勢を取っている。「NaaSは企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)において重要な位置を占め、優先事項となるべきだ」と調査会社ABI Reserchは指摘する。

 一方で「SASE」(Secure Access Service Edge)の市場が拡大している。SASEとは、ネットワークとセキュリティの機能をクラウドサービスに集約して提供する概念やそれを具現したサービスを指す。SD-WANはSASEにおける重要な構成要素の一つだ。

 2022年12月に調査会社Gartnerが発表した調査では、複数の技術の中で、SASEは2023年にITインフラと運用に与える影響が最も大きいと評価された。同社の予測によれば、2023年における世界各国のSASEに関するエンドユーザー支出は、2022年比で39%増加して92億ドルに達する。Gartnerのアナリストであるジェフリー・ヒューイット氏はSASEの採用が増えている理由として、ハイブリッドワーク(テレワークとオフィスワークの組み合わせ)とクラウドコンピューティングを採用する企業の増加を挙げている。

 Graphiantの調査によると、NaaSの採用は始まっている。ただし現段階ではNaaS市場はまだ成熟していない。SD-WANは一定の課題が存在するものの、依然として人気のあるWAN接続方法だ。NaaSが今後成熟した場合、SD-WANや他のネットワークサービスに代わる新しい選択肢として注目される可能性がある。

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