「サーバレス」の正しい理解とは【後編】
いまさら聞けない「サーバレスは安くて簡単」が誤解なのはなぜ?
サーバレスコンピューティングを利用すれば、アプリケーション運用が楽になり、コストも抑えられるという見方がある。しかし、これは一種の“誤解”だと言える。その理由とは。
「サーバレスコンピューティング」で何ができるのかについて、正しく理解されていないことがよくある。「運用作業から解放される」「コストを抑えることができる」という認識を持ったままアプリケーションを運用すると、“思わぬトラブル”に見舞われることがある。誤解しないためには、以降で紹介するサーバレスコンピューティングの仕組みや要点を理解することが重要だ。
「サーバレスは安くて簡単」が誤解なのはなぜ?
併せて読みたいお薦め記事
連載:「サーバレス」の正しい理解とは
サーバレスについてもっと詳しく
サーバレスコンピューティングでは、サーバの設定や管理、定期的なパッチ(修正プログラム)の適用などをクラウドベンダーに任せられる。そのため、アプリケーションをサーバレス化すれば運用が楽になり、コストも抑えられるという意見がある。
一方で、サーバレスコンピューティングを導入した企業は物理サーバや仮想サーバを使わない代わりに、さまざまなコンポーネント(部品)を用意して、それらを動かすためのプログラムを管理する必要がある。コンポーネントには、以下のようなものが含まれる。
- サーバレス関数
- サーバレスコンピューティングの構成要素である関数。
- API(アプリケーションプログラミングインタフェース)フロントエンド
- 複数のバックエンドサービスやAPIを1つのインタフェースとしてまとめて提供するための仕組み。
- メッセージングコンポーネント
例えば、Amazon Web Services(AWS)のサーバレスコンピューティングサービス「AWS Lambda」の関数を実行する場合、コンポーネントの数は数十から数百個にまで上ることもある。
そのため、コンポーネントの起動と管理には、「Infrastructure as Code」(IaC:コードによるインフラの構成管理)ツールや、自動化ツールの活用が欠かせない。代表的なIaCツールには以下のようなものがある。
- AWSの「AWS CloudFormation」
- AWSの「AWS Serverless Application Model」(AWS SAM)
- Microsoftの「Azure Resource Manager」
- Googleの「Google Cloud Deployment Manager」
- オープンソースの「Serverless Framework」
- HashiCorpの「Terraform」
加えて、ソースコードのデプロイ(配備)には、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインを使う。サーバベースのアプリケーションと比べて、新しいソースコードをリリースする際に、更新するコンポーネント数が多くなる傾向にあるため、C I/CDパイプラインを使って自動化をするのが望ましい。
一部の企業は、これらツールを開発環境でのみ活用している。しかし筆者は、テスト環境や本番環境でもこうした自動化の仕組みを積極的に取り入れるべきだと考える。特に複数のコンポーネントを扱うサーバレスコンピューティングでは、管理をいかに自動化するかが重要となる。
コストに関する誤解にも注意
サーバレスコンピューティングでは、コストを早い段階で見積もることが重要だ。一般的にクラウドベンダーは、以下のような要素に応じて課金する。
- 「CPU」(中央処理装置)やメモリに割り当てられたコンピューティングリソース量
- リクエスト件数
- データ転送量
- データ処理時間
サーバレスコンピューティングは、リソースの使用量に基づいて課金されるため、費用対効果に優れた仕組みだと言える。一方で、使用量が一定以上になると、サーバを用意する場合と比べてコストが高くなる可能性もある。特に、常に負荷の高い計算が求められるアプリケーションをサーバレスで運用する場合、コストは高くなる傾向にある。
反対に、リソース使用量の変動が激しいアプリケーションはサーバレスコンピューティングと相性が良い。高い計算処理能力を持つサーバを常にプロビジョニング(利用可能な状態にすること)しておく必要がないためだ。
運用するアプリケーションによってコスト条件は大きく異なるため、サーバを用意するか、サーバレスで運用するか、絶対的な答えは存在しない。そのため、アプリケーションの設計から実装に至る早い段階で料金を試算することが重要なのだ。
このように、サーバレスコンピューティングの仕組みは非常に複雑だ。開発チームと運用チームは、サーバレスコンピューティングに適したユースケースと、その長所と短所をしっかり理解する必要がある。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
製品資料
[株式会社ウェーブスプリッタ・ジャパン] 100Gbps対応の光トランシーバーはどう選ぶ? 10分で分かる選定のポイント -
製品資料
[株式会社フィックスターズ] 組み込み開発の生産性と機密性を両立、自社環境で構築する「セキュアAI」活用術 -
製品レビュー
[ServiceNow Japan合同会社] 問い合わせの約9割を自動で解決、AI主導の自律型CRMがもたらす業務変革の全貌 -
市場調査・トレンド
[ServiceNow Japan合同会社] AI活用が業務自動化で止まる理由は何か? 調査で判明した課題と変革への道筋
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
マンガで解説:採択率は3割台? デジタル化・AI導入補助金申請の落とし穴
-
2
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
3
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
4
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
5
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
6
Anthropicが明かす AIは入力データを「どこまで覚えているのか」
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
GitHubが指摘 AIが書いた「おそらく動くコード」が招くシステム崩壊
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
「高すぎるGPU」を捨てAI推論をCPUへ Armが示す電力とコストの現実解
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
-
9
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
10
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー