いまさら聞けない「サーバレス」で何ができる? 3大クラウドで丸分かり「サーバレス」の正しい理解とは【前編】

AWS、Microsoft、Googleなどのクラウドサービスには、さまざまなサーバレスコンピューティングサービスがある。何ができるのかを押さえておこう。

2024年10月09日 08時00分 公開
[Ernesto MarquezTechTarget]

 Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleといった主要クラウドサービスベンダーは「サーバレスコンピューティング」のサービス群を拡充してきた。さまざまなサーバレスコンピューティングサービスがあるだけに、「何ができるのか」が理解しにくくなることがある。3大クラウドサービスの具体例を基に、どのようなサーバレスコンピューティングがあるのかを押さえておこう。

AWS、Google、Microsoftの「サーバレス」で何ができる?

 サーバレスコンピューティングが活用される領域として、以下のようなものがある。

  • APIフロントエンド
    • サーバレスアーキテクチャを利用して、複数のバックエンドサービスやAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を統合し、1つのインタフェースとして提供する。
  • アプリケーションのバックエンド
    • サーバレスアーキテクチャを通じて、ユーザーインタフェース(UI)やフロントエンドと連携し、ビジネスロジックを実行する。
  • データベース管理
    • サーバレス環境でのデータベース管理を通じて、スケーラブルでコスト効率の良いデータストレージと運用を実現する。
  • データ処理と分析
    • 大量のデータをリアルタイムまたはバッチ処理で分析し、ビジネスインサイトを提示させる。
  • メッセージング(通信/通知)
    • イベント駆動型のアーキテクチャを通じて、リアルタイムで通信や通知を実施する。
  • クラウドサービスの統合
    • 他のクラウドサービスと連携させ、機能を統合することで、複雑なビジネスプロセスを効率化する。

 サーバレスコンピューティングは、アプリケーションの開発とテストに関する複雑なプロセスの簡素化に役立つ。物理サーバや仮想サーバの代わりに抽象化されたレイヤーを使うことで、企業はアプリケーションのデプロイ(配備)やテスト、公開を簡単に実施できるようになる。

 代表的なサーバレスコンピューティングサービスとして、AWSの「AWS Lambda」 がある。他にも、大手クラウドベンダーを中心にさまざまなサーバレスコンピューティングサービスが提供されている。

AWS

 AWSはAWS Lambdaに加えて、以下のような幅広いサーバレスコンピューティングサービスを提供している。

  • API管理サービス「Amazon API Gateway」
  • 通知サービス「Amazon Simple Notification Service」(Amazon SNS)
  • メッセージキューイングサービス「Amazon Simple Queue Service」(Amazon SQS)
  • ストリーミングデータ処理サービス「Amazon Kinesis」
  • SaaS(Software as a Service)連携ツール「Amazon EventBridge」
  • コンテナ管理サービス「AWS Fargate」
  • データ分析サービス「Amazon Athena」
    • オブジェクトストレージサービス「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)に保存されたデータに対してSQLクエリを実行することで、データ分析ができるサービス
  • データ分析ツール「Amazon EMR」のサーバレス版「Amazon EMR Serverless」
  • リレーショナルデータベース管理サービス「Amazon Aurora Serverless」
  • オープンソースの検索エンジン「OpenSearch」のサーバレス版「Amazon OpenSearch Serverless」
  • NoSQL(Not Only SQL)データベース「Amazon DynamoDB」

Microsoft

 Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」のサーバレスコンピューティングサービスには、以下のようなものがある。

  • イベント駆動型コード実行サービス「Microsoft Azure Functions」
  • コンテナオーケストレーター「Kubernetes」のマネージドサービス「Azure Kubernetes Service」(AKS)
  • マイクロサービス向けのコンテナ実行サービス「Azure Container Apps」
  • マネージド型データベースサービス「Azure SQL Database」

Google

 Googleのクラウドサービス「Google Cloud Platform」(GCP)で提供されるサーバレスコンピューティングサービスには以下のようなものがある。

  • イベント駆動型コード実行サービス「Cloud Functions」
  • コンテナ実行サービス「Cloud Run」
  • GCPのPaaS(Platform as a Service)「Google App Engine」
  • ドキュメント指向のNoSQLデータベース「Cloud Firestore」
  • 複数のクラウドサービスを連携させる「統合サービス」機能

 このように、各ベンダーはさまざまなサーバレスコンピューティングサービスを提供している。企業がこれらのサービスを選ぶ際は、必要な機能だけでなく、各ベンダーが提供するサービスの全体像を確認するとよい。だが、複数のクラウドを併用するマルチクラウドの運用は簡単ではない。そのため、できるだけ単一ベンダーが提供するサービスを選ぶのが望ましい。


 次回は、サーバレスコンピューティングのよくある誤解について解説する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

製品資料 サイボウズ株式会社

「ERP×ノーコードツール」のアプローチを推進するためのポイントとは?

DXが進み、レガシーシステムからの脱却が喫緊の課題となっている今。「ERP×ノーコードツール」のアプローチで基幹システムの刷新に取り組む企業が増えている。そのアプローチを推進するに当たってのポイントを解説する。

事例 サイボウズ株式会社

ローコード/ノーコード開発ツールで実現する、変化に強い組織の作り方

DXの本質は、デジタル技術を駆使して変化に適応する能力を身につけることにある。その手段の1つとして注目を集めているのが、ローコード/ノーコード開発ツールだ。京王グループなどの事例とともに、その特徴やメリットを紹介する。

事例 サイボウズ株式会社

ノーコードツールでDX人材を育成、京セラや日本航空などの事例に学ぶ効果の実態

DX人材の重要性が高まる中、ノーコードツールの活用によって業務改革と人材育成を両立しようとする動きが活発化している。年間約780時間の工数削減を実現した京セラをはじめとする5社の事例を基に、その実態を探る。

事例 アステリア株式会社

ものづくり現場で「足かせ」のアナログ業務、9社の事例に学ぶ業務改善の秘訣

急速に進化するデジタル技術は、製造業などのものづくりの現場にもさまざまな恩恵をもたらしている。しかし、設備点検業務や棚卸業務などの立ち仕事や移動が多い現場では、いまだにアナログ業務が残存し、効率化の妨げとなっているという。

事例 アステリア株式会社

工場・倉庫の「隙間業務」をデジタル化、11社の事例に学ぶ現場DX

あらゆる業界でDXの重要性が増しているが、工場や倉庫の中にはデジタル化が後回しにされている隙間業務が多数ある。その理由を明らかにした上で、それらの業務をモバイルアプリでデジタル化し、現場DXを推進する9社の事例を紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。