コンピューティングやストレージの需要の変化とともに、データセンター設備にも進化が見られる。効率的な冷却や、温度監視について押さえておくべき基礎知識を紹介する。
最新のデータセンターは、以前よりもはるかに洗練されている。人工知能(AI)技術を活用するためのより強力なコンピューティングや、データ量増加に対処するためのより多くのストレージが求められる中では、冷却や電力、メンテナンスなどさまざまな面でデータセンター設備を進化させる必要がある。その基礎知識として、本稿ではまず効率的な冷却や、温度監視のポイントを押さえておこう。
現代のデータセンターのほとんどは、「ホットアイル」(熱い空気を逃がすための通路)と「コールドアイル」(冷たい空気のための通路)の隔離効果を最大化するために、気流を分ける「コンテインメント」(囲い込みの方法やそのための部材)を採用している。コンテインメントとしては、ホットアイルまたはコールドアイルを封じ込めるためのパネルやビニールカーテン、ドアなどが使われる。
コンテインメントは、サーバラックの上部と天井の間にしっかりと収まるものでなければならない。ドアは自動閉鎖式で、空気の温度と循環を調整するために密閉性が高いものであることが望ましい。サーバラックの底面は、空気が漏れないようにしっかり密閉してあるべきだ。新しいサーバラックを設置する場合は、密閉性を維持するために再度コンテインメントを実施する必要がある。
サーバラックの空いたスペースは、全てブランクパネル(空きスペースを埋めるためのパネル)で埋める必要がある。小さなスペースであれば、1U(ユニット)や2Uのブランクパネルで埋めることができるが、大量に購入するとコストがかさむ可能性がある。
27Uのブランクシートであれば、ブランクパネルを個別に購入するよりも経済的になるはずだ。ブランクシートは1U単位で切り込みが入っているため、適切なサイズにカットして使いやすい。ブランクシートは、特に将来的な増強のために空きサーバラックを用意してあるデータセンターで役立つ。
ブランクパネルやブランクシートを使用することで、冷気と熱気がサーバラック内を適切に流れるようになる。そうした対策が取られていない場合、データセンター内での熱気の循環が増え、空調設備がより頻繁に作動する原因となる。
データセンター内の温度上昇も注目すべき変化の一つだと言える。背景にあるのは、サーバの高密度化によってコンピューティングリソースの負荷が増大していることだ。温度上昇の原因は増加するIT機器だけではなく、電力と冷却の設備にもある。
効率的にデータセンターを運用するには、部屋全体の温度を監視しておく必要がある。最新のサーバラック用電源タップには、温度と湿度のセンサーが装備されており、電源と同じネットワーク接続で温度や湿度を監視することができる。そうしたセンサーは、IT機器の前後に設置する。こうすることで、部屋全体の温度状態のデータを明確に表示することができる。センサーの結果は、システムに接続されたモニターに表示される。サーバラックに設置する温度計は、機器の表面温度を監視する機能を備えている。
コールドアイルでは一般的に24℃程度が適温とされている。ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)が定めるガイドラインでは、データセンター室内の適温の範囲は18~27℃となっている。これはIT機器が安定して稼働できる温度だ。ホットアイルでは35℃程度まで温度が上昇する可能性がある。
温度センサーが適切に設置されていることは、エネルギー消費の効率性を保つ上で重要だ。例えばサーバラックの列ごとの冷却をする「インロー型」の冷却を採用していれば、必要な部分だけを局所的に冷やすことで無駄な冷却を減らすことができる。不必要な温度変動が生じるのはエネルギーの無駄だと言える。
後編は、電力や防火、設備のメンテナンスなどに関する最新の基礎知識を紹介する。
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