PCだけじゃない、通信分野に広がる「ホワイトボックス」旋風「ホワイトボックススイッチ」の基本

2014年はホワイトボックススイッチと関連OSがネットワーク業界にインパクトを与えそうだ。

2014年02月24日 08時00分 公開
[Lee Doyle,TechTarget]

 ホワイトボックスイーサネットスイッチは従来の“ブラックボックス”イーサネットスイッチと比べて、IT部門にさまざまなメリットをもたらす。それは柔軟性や、設備投資負担の軽減および運用コストを削減できる可能性だ。ホワイトボックススイッチの導入は、豊富なIT人材を抱える大規模なクラウド/Webサービス事業者がけん引する見通しだ。

ホワイトボックススイッチとは?

 ホワイトボックスイーサネットスイッチは、SDN(Software Defined Networking)のサブセットといえる。ハードウェア(米Broadcomなどの半導体サプライヤーのシリコンをベースにしたベアメタルスイッチ)とネットワークOS(米Pica8、米Cumulus、米Big Switchといった企業から提供される)が明確に分離されているからだ。これら以外にも、さまざまなハードウェアとネットワークOSの組み合わせが登場するとみられている。ホワイトボックススイッチはホワイトボックスサーバと同様に、コストが安く、ノンブランド製品であり、シリコンとネットワークソフトウェアの機能の緊密な統合は実現されていない。

 ホワイトボックススイッチは、ブラックボックススイッチに見られる複雑な機能を提供することは期待されていない。ほとんどがSDN環境で使われるからだ。SDN環境では、中央のSDNコントローラーがネットワーク上の全てのスイッチに対して、転送やコントロールプレーンに関する決定を行う。

ホワイトボックススイッチのメリット

 ホワイトボックススイッチの推進者は、統合型イーサネットスイッチモデル(ベンダーの利益率は60%以上)は寿命を迎えており、コモディティ型の低利益なスイッチが取って代わるだろうと述べている。ホワイトボックススイッチの価格は、速度が同等のブランド品のスイッチよりもずっと安い。

 しかし、ホワイトボックススイッチの本当の目玉は、運用コストを抑えられる可能性にある。ホワイトボックススイッチでは、自動化とともに、ネットワーク機器をサーバのように見せることが考慮されている。このため、ITスタッフはネットワークの体系的なノウハウがなくても、ホワイトボックスのLinuxを展開、サポートができる。ホワイトボックススイッチはOpenStack、Puppet、Chefなど、幅広いIT開発ツールをサポートしているため、自社のデータセンター環境の特定ニーズに合わせてスイッチインフラをカスタマイズすることが可能だ。

ホワイトボックススイッチの課題

 ホワイトボックススイッチは、まだ導入が始まって間もない段階だ。従来のスイッチングアーキテクチャの推進者はホワイトボックススイッチについて、「特定の機能(プロトコルサポートなど)が比較的乏しい」「サービスやサポートの選択肢が不足している」と指摘している。初期購入者にしてみれば、ホワイトボックスのサポートモデルはユーザー頼みの面が強い。新しいネットワーク製品には不具合が付き物だが、それらに実際に直面したら、自分で対処しなければならない。

データセンター vs. アクセスネットワーク

 ホワイトボックススイッチは、データセンターやアクセスネットワークに展開できる。ハイパースケールデータセンターでは、ホワイトボックススイッチを展開することで、設備投資負担を軽減したり、オープンなSDNツールを利用して展開や自動化にかかる時間を短縮したりできる。

 アクセスネットワークでは、ホワイトボックススイッチを無線ネットワークコントローラーのように機能させることができる。ITマネジャーからは、「アクセススイッチは比較的単純な機能があれば十分。ワイヤリングクローゼットのスイッチに莫大な費用をかける必要は感じない」との声も聞かれる。

クラウドサービスプロバイダー vs. 大企業

 ホワイトボックススイッチに関心を持っている組織や、これらのスイッチの早期導入を行っている組織は、米Facebookのような非常に大規模なクラウド/Webサービス事業者が大半を占めている。このような事業者は、巨大なデータセンターネットワークと豊富なIT人材を擁しているため、ホワイトボックスの実装が有効な選択肢となっている。

 自社ネットワークへの依存度が高い金融サービス会社などの大企業も、ホワイトボックススイッチの重要なターゲット顧客だ。こうした企業も、ホワイトボックススイッチを実装するためにエンジニアリングスタッフを動員できる。しかし、ほとんどの金融サービス会社は、まだホワイトボックススイッチを評価し始めたばかりの段階で、導入に入るのは2015年以降になりそうだ。

要注目のホワイトボックススイッチベンダー

 注目すべきベンダーとしては、前出のソフトウェアサプライヤー、Cumulus、Big Switch、Pica8や、関連ハードウェア/チップメーカーについてはBroadcomをはじめ、台湾Accton、米Quantum、米Intel、米Mellanox、米Xpliant、中国Centecなどが挙げられる。ホワイトボックス市場は、大きく成長して既存のイーサネットスイッチプロバイダー、特に米Cisco Systems(と米Hewlett Packard、米Juniper、米IBM、米Dell、米Brocade、米Extreme、米Arista)の利益率と市場シェアに影響を与える可能性がある。

 以上をまとめると、ホワイトボックススイッチは、従来のブラックボックスイーサネットスイッチ市場を揺るがす可能性を秘めている。2014年にはデータセンターへの初期導入が行われ、市場全体に占める割合は低い水準(1〜5%程度)にとどまる見込みだ。ホワイトボックススイッチが企業にも受け入れられ、アクセスネットワーク用の導入も広がるためには、市場で設備投資負担と運用コストの軽減実績が、着実に積み重ねられていく必要がある。

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