「本当にウチの将来を考えている?」、ITベンダー営業担当の本音を見分けるにはあるべき姿の提案はあるか

定期的にIT製品のアップグレードを勧めてくるITベンダーの営業担当者は本当に顧客の将来を考えているのか? 従来の常識に縛られない技術が登場する中でITベンダーとユーザーの関係も変わりつつある。

2015年01月09日 12時00分 公開
[Margie Semilof,TechTarget]

 IT部門のプロフェッショナルたちは、従来のIT管理手法が最新のデジタルビジネスには必ずしも適さないことを知っている。それには多くの理由がある。2014年12月に開催された米Gartner主催のカンファレンス「Gartner Data Center, Infrastructure & Operations Management Conference」に出席した専門家らによると、ITプロフェッショナルは既存システムをサポートするという従来の役割と並行して、革新に向けて小さな一歩を踏み出して、これまでよりも多くのリスクを受け入れることを学ぶ必要があるという。

 Gartnerでは、このプロセスを「バイモーダル(英語bimodal、2モード型)開発」と呼んでいる。従来型技術が「モード1」、革新技術が「モード2」である。Gartnerのアナリスト、レイ・パケット氏によると、両タイプの技術は何年も共存する可能性があり、一方が他方に完全に取って代わることはないかもしれないという。

 ITプロフェッショナルとベンダーの中には今でも、技術を製品として捉え、全体的な最終目標を見据えてアプリケーションを提供する計画を立てるのではなく、一定のサイクルで製品を交換すべきだという考え方が残っており、こうした固定観念が革新的な思考の妨げになっている。

 例えば、クラウドコンピューティングやSDN(Software-Defined Networking)などは、製品の購入方法や管理方法を変える新技術である。プロビジョニングにかかる時間も数週間から数分間へと短縮できる。それに伴い、ITスタッフの連携態勢も見直さなければならない。これまで隔絶していたチーム同士が共同作業をしなければならず、スクリプトを記述する能力を高めることもIT部門全体を通じて求められるからだ。

 「2017年までに75%の企業がバイモーダルになるだろう」とパケット氏は語る。だがその半分は、それで混乱を招くことになると同氏は予測する。「それでもバイモーダルを目指さなければならない。なぜなら、それがデジタルビジネスのさまざまな要求に対処する唯一の方法であるからだ」

 SDNの場合、企業は各機器を個別に管理するという方法から、単一のコントロールプレーンを通じてネットワーク全体を管理するという方法に移行できる。これは非常に効果的な方法であり、高度な自動化が可能だが、パケット氏によると、バイモーダル開発は“弾丸を込めた巨大な銃”でもあるという。注意を怠ると、とてつもない失敗を招きかねないからだ。

 大抵のIT部門にとって、日々の業務で少しリスクが増えてもよいという考え方は容易には受け入れられないものだ。何か問題が起きるとIT部門の責任だとされる風潮を考えれば、これはやむを得ないかもしれない。

 カナダの大学でインフラ運用を担当するあるディレクターは「われわれもいずれはバイモーダルに移行する必要があるが、従業員の働き方もそれによって変わることになる。IT部門の編成を見直して計画を立てる必要がある」と語る。

 どれが古い技術(Gartnerの分類でモード1)であり、どれが新しい技術(同モード2)なのかを判断するのに苦労している企業もある。例えば、コンバージドインフラストラクチャ(集約型インフラ)のように比較的新しいように思える技術でも、モード1に分類されている。従来型の方式と見なされているからだ。これに対して、SDNは革新的な技術であるとしてモード2に分類されている。

 さらにITプロフェッショナルは、新しい技術の中でどれが“本物”かを見極める必要がある。

 「宣伝文句に惑わされずにSDNの本質をつかみたいと考えている」と話すのは、米医療機関InnovAgeでインフラ管理を担当するメイシー・シーモー副社長だ。同社は、1、2年後に社内の仮想インフラに米VMwareの「VMware NSX」を全面的に配備するのを機にSDNの導入を開始する予定だ。

 あるアナリストによると、Gartnerの指針は抽象的なので、ベンダーとサービスプロバイダーはITプロフェッショナルの支援でもっと大きな役割を果たすべきだという。Gartnerのアナリスト、マシュー・ブーン氏は「ベンダーは製品の販売や既存システムの運用サポートだけでなく、顧客のデータセンターの3年後あるいは5年後のあるべき姿についてもっと説明する必要がある」と話す。

 「それをきちんとやっているベンダーはないように思う」(ブーン氏)

 同氏によると、どんなベンダーにも戦略的な考え方をする人はいるのだが、ITプロフェッショナルと接する販売担当者は、営業成績のことしか考えないという。

 昨今、企業のマーケティング部門や研究開発部門などはIT予算の配分に対する発言権を強めている。ベンダーは、ITプロフェッショナルがこれらの部門と戦略的に連携することを支援できる。例えば、新規顧客の獲得や事業の拡大にITが貢献できることをマーケティング部門に示す場合などだ。

 ベンダーが企業に戦略的なアドバイスをすべきだという考え方に全てのITプロフェッショナルが賛成しているわけではない。

 米ペンシルベニア州にある大手私立大学のプロジェクトマネジャーは「問題は、ベンダーが間違っていたらどうするのかということだ。ベンダーはあまり信頼されておらず、誰もがベンダーに縛られたくないと思っている」と話す。

 「このようなリスク回避志向は、新たな世界で予想される状況に反するものだ。ITプロフェッショナルは新技術を徹底的に研究したら、後の半年はのんびりと構えていればいいのだ。到来する新世界では失敗が許容される。それが新たな標準になる可能性さえある」。Gartnerのアナリストであるジョン・モレンシー氏は、カンファレンスのキーノートスピーチでこう語った。だが従来型企業のITプロフェッショナルの多くは、そのような勲章を急いで身に付けたいとは思わないかもしれない。

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