「iOS 8」の新しい「モバイルアプリ管理機能」、ビジネスユーザーにとって嬉しいのは?堅牢なビジネスアプリの開発が容易に

米Appleは、同社モバイルOSの最新版「iOS 8」でアプリとデータ管理に関連した機能改善を行った。これはエンタープライズモビリティの潮流を理解してのことだ。ビジネスユーザーにとってのメリットとは何だろうか。

2015年02月17日 08時00分 公開
[Robert Sheldon,TechTarget]

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 米Appleはエンタープライズモビリティの潮流を理解している。その証拠として、同社はモバイルOSの最新版「iOS 8」でアプリとデータ管理に関連した機能改善を行った。

 iOS 8では、従業員のワークフローを効率化して、生産性を向上する堅牢なビジネスアプリを作成することができる。また、iOS 8を搭載する「iPhone」と「iPad」では、ネイティブおよびサードパーティー製アプリのパスワード保護機能が強化され、セキュリティが向上している。

iOS 8のアプリ管理とセキュリティ

 iOS 8では、基本的なモバイルアプリ管理(MAM)機能が改善されている。管理者は「iCloud」の同期や特定のアプリでドキュメントのアクセスを制御できるようになった。同様に、サードパーティー製のストレージサービスへのアクセスも管理可能だ。その他にも、管理者がアプリごとに「Touch ID」を有効/無効に設定できる新機能が追加されている。さらに、IT部門が「Spotlight」(iOSのシステム全体を検索する機能)にインターネットの検索結果を含めるかどうかを決められるようになっている。

 デバイスを照会して、それに関連付けられている「iTunes」アカウントを判別することも可能だ。この機能はユーザーがデバイスで使用するApple IDを変更した場合に重宝する。IDが変更されると、IT部門は「Volume Purchase Program」に同梱されているボリュームライセンス機能を使用して、アプリや仕事のドキュメントの管理/インストールを行えなくなる。

 iOS 8では「マネージドドメイン」という概念も導入されている。これは、MDM(モバイルデバイス管理)をインターネットに拡張したようなものだ。この概念により、管理者は一連のWebサイトを認識し、指定のURLからダウンロードしたファイルを、MDM管理下にあるアプリからしか開けないように指定することができる。

 Appleは、セキュリティがiOS 8のモバイルアプリ管理アプローチの一部だという認識を強めている。IT部門は、一時的なユーザーがアプリのパスワードを変更したり、気付かないうちに会社のデータを消してしまう状況を防ぐことができる。また、管理者は上述の機能をサードパーティー製アプリと一部のネイティブアプリに適用することが可能だ。後者の例には、「カレンダー」「連絡先」「メッセージ」「リマインダー」などがある。

 それに加え、iOS 8の「メール」アプリでは、メッセージごとにS/MIME(Secure Multipurpose Internet Mail Extension)暗号化を有効にできる。S/MIMEメッセージを受信した場合は、送信者の身元がより確実で、メッセージが送信時から変更されていないことについて信頼性が高くなる。通信が法律、基準、規制によって管理されることが多い規制の厳しい業界に携わる企業では、この機能が特に重要になる。

iOS 8向けアプリの開発

 iOSのモバイルアプリ管理における最大の変更点の1つは、Appleが導入した4000を超えるアプリケーションプログラミングインタフェース(API)だ。これらのAPIによって、社内開発者を抱える企業は、セキュリティ、管理、生産性のニーズに対応したカスタムアプリを以前よりずっと容易に実装できるようになる。

 新しい開発機能が多数導入されているため、その全てを紹介することはできないが、IT部門が関心を持つと思われる機能を幾つか取り上げたい。まず、iOS 8では、コンテンツフィルタリングツールを作成するためのネットワーク接続フレームワークが導入されている。コンテンツをフィルターできることによって、IT部門は不適切なWebサイトへのアクセスを防ぎ、企業のコンプライアンス基準と規則を満たしたアプリを導入できる。

 新たなAPIによってアプリをカスタマイズし、他のアプリと特定のサービスを共有することもできる。例えば、開発者はAppleの「Safari」や「メール」と統合する拡張機能を追加することが可能だ。既存のMAM戦略にiOS 8のアプリ間の連係を取り入れれば、IT部門はモバイルデバイスで行われるタスクのほとんどについて、1つか2つはステップを減らせるだろう。そして、その結果として従業員のワークフローを簡略化することができる。

 iOS 8にはドキュメントプロバイダーAPIも追加されている。このAPIを使うと、アプリが企業内のファイルサーバまたはクラウドサービスプロバイダーの環境にあるドキュメントにアクセスできるようになる。また、iOS開発プラットフォームには、カスタムアプリにTouch ID指紋認証機能を組み込むためのAPIが用意されている。このAPIを使用すると、ユーザーを認証し、データ、サービス、ネットワーク、クラウドリソースへのアクセスを承認することができる。

iOS 8を使う

 これまでAppleは、iOS環境とネイティブアプリをロックダウンして、安定性とセキュリティを最大限に高めることに努めてきた。だが、iOS 8で導入された拡張機能によって、今までになかったセキュリティリスクと管理上の課題が生じる恐れもある。新しい拡張機能によって、サードパーティー製アプリはネイティブアプリと簡単に連係できるが、これは過去のバージョンのiOSではセキュリティ対策として防止されていたことだ。iOS 8はまだ完全にテストされていない。だが、コーディング環境とネイティブアプリ環境を開放したことで、IT部門は今までとは異なる脆弱性に取り組む必要に迫られるだろう。

 iOS 8がリリースされたばかりであることを考えれば、セキュリティへの正確な影響を判断するのは時期尚早だ。それでも、新たなiOSのモバイルアプリ管理機能が多数追加されたことは、ほとんどのIT部門にとって十分なトレードオフになるだろう。Appleがアプリとそのデータを管理して保護しようとする時流を認識していることは間違いない。また、IT部門は、iOS 8のモバイルアプリ管理オプションにおおむね満足するだろう。

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